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【第4回】台湾編-国際癌病康復協会理事が各国のがん専門医師と対談-

【連載第4回 台湾編】 台湾大学医学院微生物学科教授:王萬波教授、台北医学大学附設病院副院長、同がんセンター主任:邱仲峰医師との対談

【第4回 台湾編】として、台湾大学医学院微生物学科教授:王萬波教授、台北医学大学附設病院副院長、同がんセンター主任:邱仲峰医師との対談との対談を紹介します。

  • 【連載にあたって】序文と推薦者の言葉(⇒内容を読む)

    【序文】国際癌病康復協会理事 陳海威

    がん治療のもう一つの可能性として注目される漢方療法の展望

    【推薦の言葉】アメリカがんコントロール協会会長 フランク・コウジノウ

    がん治療における代替医療の重要性と漢方がん治療の占める位置

  • 【第1回】日本編(⇒内容を読む)

    【帯津良一 帯津三敬病院名誉院長・医学博士】

    身体、心、生命の人間丸ごと診るホリスティック医学を推進

    【阿部博幸 九段クリニック名誉院長・医学博士】

    標準治療の壁を打ち破ると期待される漢方がん治療

  • 【第2回】アメリカ編(⇒内容を読む)

    【Joyce O'Shaughnessy アメリカ内科医学会内科腫瘍専門認定医】

    西洋医学と東洋医学の融合による受益者は患者、医師、そして医学界

  • 【第3回】香港編(⇒内容を読む)

    【施祖榮 香港大学中医薬学院准教授・中医学博士】

    漢方薬の天仙液に関する研究試験で大腸がんに対する抗腫瘍作用を検証

  • 【第4回】台湾編(⇒内容を読む)

    【王萬波 台湾大学医学院微生物学科教授】

    中薬「天仙液」の基礎理論研究と実験によって得た抗がん作用

  • 【第5回】タイ編(⇒内容を読む)

    【Jakkriss Bhumisawasdi タイ保健省公共衛生部公衆衛生課総督察長】

    「タイ医学と代替医学部門」の目的は中西医統合によるがん治療

【王萬波 台湾大学医学院微生物学科教授】

米パデュー大学生物科学研究所博士、台湾大学医学院微生物学科教授、ハーバード大学ダナ・ファーバーがん研究所研究員を務める。

中薬「天仙液」の基礎理論研究と実験によって得た抗がん作用

陳:先生が台湾大学医学院を卒業された後に、渡米してパデュー大学で博士号を取得しました。さらにその後、ハーバード大学ダナ・ファーバーがん研究所(Dana-Farber Cancer Institute)にてポスドクとして研究を行いました。後に台湾に戻り、教育及び研究の仕事に携わるうえで、これらの経歴はご自身に何か影響を与えているのでしょうか。
王:ハーバード大学ダナ・ファーバーがん研究所は全米でも最先端ながん研究センターとして知られています。私の指導教授であるデイビッド・リビングストン(Dr. Prof. David M. Livingston)教授は、アメリカ科学アカデミーの会員であり、彼のもとでがん研究の仕事に携わることができたことは、私にとって非常に光栄なことでしたし、そのことによってがん及び細胞研究に対する自身の視野を広げることができました。この経験は私が帰国した後の教育及び研究に対し、計り知れないほど大きな影響を及ぼしていると思います。
陳:全世界の腫瘍の専門家は、がんを治療できる特効薬を見つけようと努めていますが、未だに具体的な方法はつかめていません。うまく行かない原因は何だとお考えですか。
王:私どもの病院では現在、身体に対しては西洋医学を、心に対しては様々な心理療法を、そして生命に対しては中国医学(漢方医学)やホメオパシーなどを駆使しています。現在において、西洋医学はホリスティック医学の戦術の一つです。その上で、私が一番大切に考えているのは、医師と患者さんとの信頼関係、一体感です。
陳:全世界の腫瘍の専門家は、がんを治療できる特効薬を見つけようと努めていますが、未だに具体的な方法はつかめていません。うまく行かない原因は何だとお考えですか。
王:各種のがんが起こる原因として、がん遺伝子及び抗がん遺伝子に変異が生じることに加え、免疫力の衰退ということもあげられます。これらによってがんは複雑化したため、治療薬の開発も制限を受けていることが現状であります。今最も流行している分子標的治療を例にとると、薬を投与することによって単一のがん発症ルートを塞ぐことができますが、がん細胞も相当賢いものですから、別の発症ルートに逃げ込んで行きます。それによって治療の効果は大幅に低減してしまいます。そのため、治療の標的を多くすべきなのではということも、今科学者が探究している重要なテーマの一つです。がん腫瘍の生成にも良し悪しがあり、免疫を下げるような分子に対しては、抑制して死滅させなければなりません。一方、免疫を高めるような分子に対しては、活性化させるべきです。これらはすべて研究を行ううえでの基本的な方針となります。
陳:10数年前、青杏医学文教基金会が発表した研究計画にて、中薬(漢方薬)「天仙液」に対して一連の研究を行うということが発表されました。これは、過去のウイルスや細胞に対する研究とは一線を画したものだと思いますが、なぜこのような変更を取ったのでしょうか。
王:私自身が受けた教育というのはがんの生成原因を探ることでしたので、我々の研究室でも遺伝子療法や、腫瘍ウイルスに関する研究を行っていますし、当初「天仙液」にどれほどの効能を持っているのか、我々も全く把握していませんでした。しかし何かのご縁があってのことなのか、それとも研究者としての本能からなのかはわかりませんが、既存の基礎理論と実験器具を用いて、中薬が果たして本当に抗がん作用があるのかどうかを探ってみようと思ったのです。それを根気よく続けてきた結果、興味深い研究成果をたくさん挙げることができました。
陳:分子細胞学から動物実験に至るまで、微生物研究では最も厳格な基準に基づいて、様々な実験を行っていると思います。また、欧米の国際的医学雑誌においても数多くの論文が発表されました。その中でも最も重要な発見は何だと思われますか。
王:正直に言いますと、最初に発表した論文は、様々ながん細胞株に対し、「天仙液」はそれらを死滅させることができる、といった内容のものでした。それだけでも十分すごいことですが、さらに「天仙液」は、例えば血球細胞や、新生児のへその緒の細胞などと言ったような正常の細胞株に対し、何ら損害を与えないことも判明しました。薬品による治療は、こういった選択性があってこそ、効果が期待されるのです。二つ目の重要な論文は、BMC Cancer誌に掲載されています。その雑誌は滅多に中薬に関する研究論文を受け入れませんので、その論文は計20回以上引用されています。これだけでも中薬研究において素晴らしい成績と言えますが、最も重要な研究成果は別にあります。即ち、どのようにして腫瘍の転移、及びがん細胞新生血管の生成を抑制するかという方法なのです。「天仙液」ががん治療においてその真価を発揮するのは、抗がん免疫力を刺激し、がん細胞の天敵であるキラー型T細胞を活性化させることではないかと思います。そのため、「天仙液」は、多標的効能を有する複合型の中薬と言えましょう。
陳:未来において、ヒト臨床実験でも基礎薬理実験でも、「天仙液」ががんを打ち勝つ特効薬になるためには、これからどういった研究を重ねて、どのように改良を進めるべきだと思われますか。

王:単一の中薬の特性については、すでに数多くの研究成果が発表されていますが、複合型の中薬に関しましては、薬材と薬材の「協同作用」をいかに生かせるかが最重要なポイントだと思います。組合せが悪いと、良くない結果を引き起こすかもしれませんし、逆に組合せが適切ですと、非常に良い効果を発揮することができます。これは、ただ単にそれぞれの薬材の有効成分を取り出しさえすれば達成できるような効果ではありません。「天仙液」がもし抗がん免疫力を活性化させるという面において、もしくは化学療法との配合という面においてさらに一歩進んだ研究を行うことができれば、中薬研究をさらに充実化、透明化させるだけではなく、その実用価値を一層高めることができるでしょう。

【邱仲峰 台北医学大学附設病院副院長・同がんセンター主任】

台北医学院医学系学士、国防医学院医学研究所博士、台北医学大学附設病院副院長、同がんセンター主任、台湾放射腫瘍学会専門医師審査委員会委員長を務める。

中西医結合医学における漢方薬の役割と今後の展望

陳:台北医学大学附設病院のがん治療センターでは、様々なタイプのがんに対応した最先端の設備はもちろん、最も画期的なのは、東西融合型のがん治療法を強調していることではないかと思います。これはほかの病院ではほとんど見られない治療理念ですが、どうしてあなたたちはがん治療において、この東西融合という理念をこれほど重要視するのでしょうか。
邱:当病院のがんセンターが設立されて以来、私たちは東洋と西洋の医学が融合する中西医結合医療で、がんを治療することができるということを提唱してきました。当然、漢方薬は実際の医療現場において用いるのには、まだまだ科学的なデータが不十分だと主張する科学者や医師も大勢います。しかし、漢方薬は体調の維持改善だけではなく、治療による副作用を減らすなど、患者がスムーズに治療を終えるようにサポートをする効果が十分にあるということが、実際の臨床試験を通してはっきりとわかったのです。そのため我々は、東西の医学を併用するようながん治療法を大いに支持します。ただし、患者が自分の知見で通常とは異なる療法を試みたり、漢方薬に手を出したりするようなことには我々も賛同できません。
陳:東西融合型のがん治療センターを設立するうえで、伝統的な西洋医学を専門とする医師と、漢方を専門とする医師(中医師)が、どのようにして交流を図ればよいのでしょうか。
邱:中薬部門で腫瘍の治療に携わる中医師も、がんセンターの医療会議には参加し、そこでがんの治療プロセスの全体像、及びその中で起こりうる問題を把握するのです。そして患者の実際の症状の進行状況に合わせて、適切な診療及び看護をします。我々の一年間にわたる統計データによりますと、2000名ものがん患者の中の約85%は、このような治療プロセスを喜んで受け入れています。これは台湾のほかの大型病院では非常に稀な現象です。ほかの病院で治療を受けていても、うちの病院で漢方薬の使用に関するアドバイスを聞きに来る患者もいらっしゃいます。中には自分で購入した漢方薬や健康食品を持ってきて、医師たちと討論を重ねる方もいらっしゃいます。このようなことは、うちの病院では非常に歓迎されていることです。うちの病院の医師長も長期間にわたって中医の影響を受けていますため、漢方薬に対してはネガティブな意見を持っていません。それに、中国人が漢方薬を受け入れるというのは慣習であり、伝統でもあります。もしも医師の専門訓練を強化させ、東西融合型の治療法が実現するならば、最終的に受益するのは患者です。私は25年間にわたって医療を行ってきましたが、そのような変化を見るのは非常に楽しみであります。
陳:先生の25年以上にわたるがん治療の臨床経験から、もし東西融合型のがん治療プランを立てることが可能ならば、具体的な薬の投与や治療の詳細などはどのようにして定めればよいのでしょうか。
邱:ちょうど今、我々は東西融合型がん治療法のマニュアル「手引き(Guide Line)」を作成しているところです。乳がんを例にとると、そのマニュアルには、第何期の患者はいつ手術を受け、その後、化学療法や放射線療法を受けるべきかが明確に記載されています。病状の進行状況に合わせて、漢方薬のほうを適切に導入することで、西洋医学による治療と東洋医学による体調管理を同時に患者に提供することができます。ただ、このマニュアルが完成するのには、データを集めることも考慮に入れると、後3~5年ほどの時間がかかる予定です。もし完成すれば、この方式はきっと将来におけるがん治療の手本になるのではないかと、私は信じています。
陳:台湾では、多くのがん患者は中薬(植物薬)をがん治療の手段の一つとして好んで用いています。初期では、中薬(植物薬)は口コミで紹介され、使用されて来ましたため、時には悪い効果を生むことも当然考えられます。もし中薬(植物薬)を本当にがん補助療法として採用するのならば、どのような条件を満たす必要があると思われますか。
邱:大多数の人や、一部の医療にかかわる人でもよく見られることですが、植物薬と漢方薬を混同しています。基本的に、植物薬とは科学的な裏付けもなく、古典的な医薬書籍でもその効果は記載されていないような薬です。これらは最低限な安全性すら保障されないのです。それに対し漢方薬とは、古典的な医薬書籍にも記載があり、実際な投与経験の累積及び科学的な裏付けが伴うような薬を指します。両者には天と地ほどの違いがあり、本来決して混同してはならないのです。そのため、多くの人が服用しているのはおそらく正規の漢方薬ではなく、偏方(民間の処方)に過ぎないかもしれません。したがって、一般の人が植物薬と正規な漢方薬の違いを正しく認識できるよう、我々医療に携わる人たちが正しい知識を与えなければなりません。西洋薬も薬であり、漢方薬も薬であります。薬である以上、正確な処方及び用途がなければなりません。もし漢方薬に科学的な裏付けが不足しているのならば、自然と正統な医学との間に衝突が生じるでしょう。もし漢方薬に安定した質や科学的データがなく、医者でさえも漢方薬に対して正しい認識を持てないのであれば、いっそのこと漢方薬の投与をやめてしまった方がよいと思います。そのほうが少なくとも命には危険を与えませんから。したがって、漢方薬が今後どれほどの信頼を勝ち取り、その効果を発揮するかは、政府の支持と我々の努力を通して、漢方薬に関する知識を正しく伝達することにかかっていると思います。
陳:最近の医学界では免疫療法が非常に流行っているそうですが、その中でもとりわけナチュラルキラー細胞(NK細胞)やT細胞に関する議論が盛んに行われています。もし中薬(漢方薬)がNH細胞あるいはT細胞を活性化させる効果があるならば、それはがん治療にも役に立つと思われますか。

邱:数年前までは、NK細胞とT細胞を活性化させることは、免疫力をアップさせる研究の主な方向性でした。しかし今では、免疫療法はすでに最新の正規療法の一つとなっています。その基礎理論というのは、分子標的治療薬と似たような薬を投与することで、免疫細胞に対し触媒作用を及ぼすことでより攻撃力を帯びるようになり、同時に免疫細胞中のブレーキシステムを抑えることで、免疫細胞がより効率的にがん細胞を抑えることができます。こうした一連の作用を通して、より良い治療効果を得ることができるというわけです。2015年の唐奨(Tang Prize)の受賞者である、アメリカ人のジェームズ・アリソン博士(Dr. James P. Allison)と日本人の本庶佑博士(Dr. Tasuku Honjo)は、まさにその免疫抑制分子を発見したことで、がん療法に大きなブレークスルーをもたらしたことが評されて、受賞したわけです。将来、ノーベル賞を取る可能性も大いにあります。現在では、免疫療法は費用が高く、治療の時期も未定なため、今後さらなる研究及び実証を重ねる必要があります。しかし未来の10年の間、免疫療法はがん治療分野において討論及び研究の対象となることは間違いないでしょう。中薬がNK細胞とT細胞を活性化させることで免疫療法を向上させるという点では、確かにその長所を発揮できます。しかし具体的にどのようにして免疫療法と配合させ、患者の体を維持管理し、免疫治療による副作用を抑えるかといったことも考慮すると、やはりさらなる研究と討論を重ねる必要があります。
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    【序文】国際癌病康復協会理事 陳海威

    がん治療のもう一つの可能性として注目される漢方療法の展望

    【推薦の言葉】アメリカがんコントロール協会会長 フランク・コウジノウ

    がん治療における代替医療の重要性と漢方がん治療の占める位置

  • 【第1回】日本編(⇒内容を読む)

    【帯津良一 帯津三敬病院名誉院長・医学博士】

    身体、心、生命の人間丸ごと診るホリスティック医学を推進

    【阿部博幸 九段クリニック名誉院長・医学博士】

    標準治療の壁を打ち破ると期待される漢方がん治療

  • 【第2回】アメリカ編(⇒内容を読む)

    【Joyce O'Shaughnessy アメリカ内科医学会内科腫瘍専門認定医】

    西洋医学と東洋医学の融合による受益者は患者、医師、そして医学界

  • 【第3回】香港編(⇒内容を読む)

    【施祖榮 香港大学中医薬学院准教授・中医学博士】

    漢方薬の天仙液に関する研究試験で大腸がんに対する抗腫瘍作用を検証

  • 【第4回】台湾編(⇒内容を読む)

    【王萬波 台湾大学医学院微生物学科教授】

    中薬「天仙液」の基礎理論研究と実験によって得た抗がん作用

  • 【第5回】タイ編(⇒内容を読む)

    【Jakkriss Bhumisawasdi タイ保健省公共衛生部公衆衛生課総督察長】

    「タイ医学と代替医学部門」の目的は中西医統合によるがん治療