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末期がんへの漢方薬の効果は?抗がん剤と併用するメリットも解説

末期がんと医師から告げられ「なにか打つ手はないか」「少しでも苦痛を軽減できないか」と悩む方は少なくないでしょう。
漢方薬には、苦痛となる症状や抗がん剤の副作用を緩和するなどの効果が期待できます。
本記事では、末期がんに対する漢方薬の効果や、抗がん剤との併用のメリットについて解説します。
末期がん患者やその家族が納得のいく療養生活を送れるよう、本記事の内容をぜひご活用ください。

1.漢方薬で末期がんは治る?

がんの1年以内の再発率を部位別に紹介

末期がんとは、一般的には「がんの治療が難しいほどステージが進んだ状態」を言います。
末期がん患者やその家族がまず気になるのは「末期がんは治るのか」という点でしょう。
以下では、漢方薬の抗腫瘍効果(がんを治療する効果)について解説します。

漢方薬だけでがんの完治は難しい

漢方薬だけで末期がんを完治させることは現時点では難しいとされています。
動物を使った基礎研究ではいくつか有効なデータがありますが、人を対象とした臨床研究では有効な結果は示されていないのです。
現在のがん治療では、手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤)、ホルモン療法を主要な治療方法としています。
一方、漢方薬は抗がん剤などの治療をサポートする役目として位置づけられています。

漢方薬はQOLを向上させ延命することもある

末期がん患者はがんそのものの症状だけでなく、治療の副作用や身体的・精神的な負担にも直面しているのが現実です。
しかし、漢方薬を使用することで末期がん患者のQOL(生活の質)の向上が期待できます。
漢方薬は、患者の体力や免疫力を保ち、心身ともに安定させることができます。
加えて、抗がん剤などの治療による副作用を軽減し、治療をスムーズに継続できれば、結果として生存期間の延長につながるでしょう。
そのため、がん治療の補助療法として、漢方薬の使用は有用であるといえます。

漢方薬の末期がんに対する効果

漢方薬の末期がんに対する効果

漢方薬にはがんに対抗する免疫を活性化させたり、体内の発がん物質を抑えたりする作用があります。
以下では、漢方薬の末期がんに対する効果について解説します。

免疫力を向上させる

漢方薬の中には体内の免疫に作用し、がんに対する免疫を向上させるものがあります。
免疫力が向上することにより、末期がんの進行の抑制が期待できるのです。
以下に、免疫力を向上させる漢方薬を紹介します。

  1. 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):免疫を司るNK細胞(注1)を活性化させる
  2. 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):マクロファージ(注2)を活性化させる

これらの免疫向上効果を期待し、がん治療の併用療法として漢方薬を利用する場合があります。

(注1)NK細胞(ナチュラルキラー細胞) とは、血液内にあるリンパ球の一種で、がんやウイルスに侵された異常な細胞を発見し攻撃する細胞のこと。
(注2)マクロファージ とは、白血球の一種で、がん細胞やウイルスなどを消化し体内から取り除く細胞のこと。

発がん物質の活性酸素を抑制する

漢方薬は活性酸素を低減し、がんの予防や進行防止に寄与する場合があります。
活性酸素とは、体内の代謝の過程で生じる発がん物質の1つです。
活性酸素によって細胞に傷がつき、がん細胞が増殖しやすくなることが知られています。
また、活性酸素はNK細胞などのリンパ球や、マクロファージなどに影響し、免疫機能を低下させる恐れもあります。
漢方薬には血流を改善し、体内の活性酸素を低減する働きがあるのです。
以下の漢方薬が、活性酸素を低減させるものです。

  1. 通導散(つうどうさん) 
  2. 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 

これらの漢方薬を使用することで、活性酸素による発がんの防止と、免疫機能の向上が望めるでしょう。

2.漢方薬が末期がんの症状を緩和する理由

漢方薬が末期がんの症状を緩和する理由

 

消化管の働きが高まる

がんの進行により、消化機能の低下が起こり、食欲不振や嘔気、便秘、下痢などの症状が出現する場合があります。
漢方薬を使用することで、消化不良や便秘などの症状の緩和が期待されます。
これは、漢方薬には胃腸の働きの促進、過剰な胃酸分泌の抑制、腸内環境の調整などの効果があるためです。
加味逍遥散(かみしょうようさん)は、胃腸の働きを促進する効果が高いとされており、臨床でも多くのがん患者に使用されています。
このように、漢方薬を利用することで、QOLが向上し、栄養摂取がスムーズになると期待されます。

水分の代謝が促進される

がんが進行したり、体が低栄養状態になったりすることで、体に水分が溜まりやすくなります。
脚や手に水分が貯留すると重だるく感じ、手足が動かしにくくなります。
また、水分が肺に溜まると胸水、腹部に溜まると腹水と呼ばれ、これらの進行により起こる症状が呼吸困難感や腹部圧迫感です。
漢方薬を使用することで、末期がん患者の浮腫(むくみ)や胸水、腹水などの緩和が期待できます。
なぜなら、漢方薬の中には、水分の代謝を促進し利尿をもたらすものがあるためです。
特に、漢方薬の中でも五苓散(ごれいさん)は水分の代謝を促す力があり、浮腫や臓器に溜まった不要な水分の排出に効果があると言われています。
水分の代謝を促す漢方薬を適切に使用することで、体内の余分な水分が排出され、患者のQOLの改善につながるでしょう。

疼痛が緩和する

末期がんでは、元々がんが発生した臓器(原発巣)のみならず、転移した他の臓器や骨などにも疼痛が生じます。
鎮痛剤と併用して漢方薬を使用することで、末期がんによる疼痛を効果的に軽減できます。
以下が鎮痛効果の期待できる漢方薬です。

  1. 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):鎮痛効果がある
  2. 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):筋緊張や疼痛を緩和する
  3. 四逆散(しぎゃくさん):炎症を和らげ疼痛を緩和する


また、末期がんの鎮痛目的で用いられるオピオイド(麻薬性鎮痛剤)は、消化管の働きを阻害し、嘔気や嘔吐、便秘をもたらします。
そこで、消化管の働きを高める加味逍遥散(かみしょうようさん)という漢方薬を使用することで、鎮痛剤による副作用を抑え、効果的に鎮痛剤を使用できます。
このように、鎮痛剤と漢方薬を併用することで、より効果的に鎮痛を図ることができ、患者の苦痛緩和が期待できるでしょう。

倦怠感が和らぐ

がんの進行にともない、疲労感や倦怠感が一日中続くようになり、横になる時間が増えます。
そこで、末期がん患者の倦怠感の改善に効果があると考えられるのが漢方薬です。
漢方薬には、消化吸収した栄養をエネルギーに変え活力を増加させる働きがあります。
特に倦怠感に効果があるとされているのは、以下の漢方薬です。

  1. 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):倦怠感、気力低下、食欲不振に効果がある
  2. 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) :倦怠感、貧血に効果がある

これらの漢方薬で体力を補い、少しでも快適な生活が送れるようにしたいですね。

抑うつ症状が改善する

末期がん患者の中には、抑うつのような状態でふさぎこむ方も少なくありません。
先行きの不透明さや、がんおよび副作用による症状、長期の療養生活など様々なストレスに見舞われるためです。
漢方薬は、末期がん患者の抑うつ症状を改善し、意欲の向上につながる効果があるとされています。
具体的には次のような漢方薬があります。

  1. 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):抑うつを改善し気分を明るくする
  2. 加味逍遥散(かみしょうようさん):ストレスによる諸症状を改善する

意欲が回復すると活動性や食欲も増進し、療養生活を送るための体力の維持が望めます。
闘病生活を穏やかに過ごすためにも、漢方薬を適切に使用したいですね。

3.漢方薬は抗がん剤との併用で副作用を軽減させる

漢方薬は抗がん剤との併用で副作用を軽減させる

がんの治療を行ううえで、多くの患者を悩ませるのが治療による副作用でしょう。
特に抗がん剤は血管を通って全身を巡るため、副作用も多岐にわたります。
末期がんと診断された方の中には、すでに何クールも抗がん剤を投与してきた方や、現在も投与中の方も少なくないでしょう。
そこで漢方薬を取り入れることで、抗がん剤による副作用の軽減が期待できるのです。
以下では、抗がん剤で起こりうる代表的な副作用と、副作用を軽減する漢方薬について解説します。

倦怠感

抗がん剤の副作用としてほとんどの患者に起こる症状といえば倦怠感です。
倦怠感が生じることで、活動性や食欲が低下し、さらなる体力の低下が懸念されます。
漢方薬は身体全体のバランスを整える効果があり、疲労回復やエネルギー補充に効果があるとされています。
特に倦怠感に効果があるとされているのは、以下の漢方薬です。

  1. 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):倦怠感、気力低下、食欲不振に効果がある
  2. 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう):倦怠感、貧血に効果がある

抗がん剤の副作用による身の置きどころのない倦怠感は、患者本人も、見守る家族も辛いもの。
疲労感の軽減を図るため、漢方薬の使用を検討してみましょう。

口内炎

抗がん剤治療による副作用として、口内炎も見逃せません。
抗がん剤には、細胞分裂を阻害する作用があり、口腔内の細胞がダメージを受けることで口内炎が発生するのです。
漢方薬の中には口腔内の粘膜を保護する成分が含まれるものがあり、副作用管理に漢方薬を併用することで、口内炎の治癒が促進されます。
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)には、抗炎症作用や鎮痛、抗菌効果があり、口内炎に効果があります。
内服するのはもちろん、口内炎に直接塗布したり、半夏瀉心湯を水に溶かしたものでうがいするのもよいでしょう。

消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐)

食欲不振、嘔気、嘔吐などの症状も、抗がん剤の副作用でよく見られる症状です。
これらの消化器症状は、抗がん剤が嘔吐にかかわる脳の部位を刺激したり、消化管を直接刺激したりすることで起こります。
「漢方薬が末期がんの症状を緩和する理由 」の項目でもお伝えしたとおり、漢方薬により消化管の働きが促進され、消化器症状の軽減が図れます。
消化器症状と随伴症状に応じた漢方薬の選択は次のとおりです。

  1. 六君子湯(りっくんしとう):食欲増進のホルモンを分泌させる
  2. 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう):軟便・下痢をともなうときに使用
  3. 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):強い倦怠感をともなうときに使用

漢方薬には胃腸を保護する作用や吐き気を抑える効果があります。
QOL向上のためにも、体質や症状に合った漢方薬を使用したいですね。

末しょう神経障害(しびれ)

末しょう神経障害(しびれ)も抗がん剤の副作用で比較的よく見られる症状です。
漢方薬を使用することで、末しょう神経障害によるしびれやジンジンとした疼痛の改善につながる可能性があります。
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は、神経を修復し、末しょう神経の障害を改善すると報告されています。
しびれ発症後の改善だけでなく、抗がん剤を使用する前に牛車腎気丸を予防的に使用することで、末しょう神経障害を未然に防ぐとも言われています。

まとめ.末期がんの療養生活に漢方薬を取り入れてQOLを向上させよう

末期がんの療養生活に漢方薬を取り入れてQOLを向上させよう

この記事では、がんの1年以内の再発率について解説しました。がんは手術後1〜2年以内に再発することが多いのが特徴です。しかし、がんの部位やタイプによっては、5〜10年経過後に再発することも珍しくありません。

いずれにせよ、再発の早期発見には定期的な通院と検査が大切になります。通院や検査を怠っていると、病期がかなり進んだ状態で発見されることとなる可能性があります。

毎年の健康診断や医師からいわれている通院の期間は必ず守るようにしましょう。

末期がんでも安定から好転、完治を目指すがん治療法があります

今までのがん治療(手術、抗がん剤、放射線治療)の問題点として挙げられる身体への負担、副作用、転移、再発、末期がん(ステージ4)などに対して、ヨーロッパやアメリカでは有効な治療法を研究開発してきました。

こうした治療法は、標準治療の問題点をクリアし標準治療を補完する意味から、代替療法と呼ばれています。代替療法のなかでも、特にがん治療の選択肢として注目されているのが、自然生薬で作られている漢方によるがん治療(漢方療法)です。

●参考文献

・がんと漢方,愛知県がんセンター中央病院循環器科 波多野 潔
https://cancer-c.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/1166.pdf

・漢方薬によるがん転移阻害のメカニズム,和漢医薬学総合研究所 済木育夫 教授
https://www.inm.u-toyama.ac.jp/wiki/review_01.html

・NK細胞療法,がん免疫療法・がんワクチン治療ならセレンクリニック東京
https://serenclinic.jp/dc/other/

・癌の治療方法のひとつ「マクロファージ活性化療法」について
https://www.cancertx-negiup.com/treatment/macrophage.html#:~:text=%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E7%99%BD%E8%A1%80%E7%90%83%E3%81%AE,%E6%94%BB%E6%92%83%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B2%BB%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

・漢方薬とガン治療,岐阜市茜部の漢方専門薬局【妙泉堂薬局】
https://myosendo.com/cancer2/

・ガンの治療方法について,命泉堂薬局 八尾市の漢方薬局
http://meisendou.com/cancer/

・Vol.270 丹参(たんじん)のチカラ ~活性酸素の悪影響を和らげる生薬~,ブヘサ中村固腸堂 - 石川県津幡町
https://kocyoudou.com/koramu_k1443492448.html

・医療用漢方製剤の抗酸化活性に関する研究,東邦大学理学部リポジトリ
https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=TD28084584&elmid=Body@&fname=td28084584_cover.pdf

・ラットにおける血液流動性と活性酸素動態に対する漢方薬の影響,日本東洋医学雑誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/62/3/62_3_337/_article/-char/ja/

・副作用対策としての漢方薬 抗がん薬のつらい副作用は我慢しない 医師や認定薬剤師に相談して、正しい漢方薬の使い方を,がんサポート
https://gansupport.jp/user_registration?redirect_to=/article/treatment/anti/anti01/14234.html/2

・緩和医療において期待される漢方治療,日本赤十字社 姫路赤十字病院 緩和ケア内科 副部長 福永 智栄 先生
https://www.philkampo.com/pdf/phil63/phil63-14.pdf

・がん治療における漢方薬 がん治療の補完療法としての役割 エビデンスの認められた漢方薬をがん患者さんへ届ける!,がんサポート
https://gansupport.jp/article/treatment/alternative/kampo/14233.html

・緩和医療における漢方治療の役割,がんサポート
https://gansupport.jp/article/treatment/alternative/kampo/4240.html

・倦怠感が続く人は、漢方で早めに改善,クラシエの漢方
https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/body/?p=10919

・クラシエの漢方 オンラインショップ
https://kamposhop.kracie.co.jp/shop/r/r303010/#:~:text=%E5%8D%81%E5%85%A8%E5%A4%A7%E8%A3%9C%E6%B9%AF%E3%81%AF%E8%83%83%E8%85%B8%E3%81%AE%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%82%92,%E3%81%AB%E3%82%82%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

・がん治療中の辛い症状は漢方薬でも改善できる!,QLife漢方
https://www.qlife-kampo.jp/cancer/story7964.html

・身体の痛み、治療の副作用、心のつらさ…… がん患者さんの悩みを漢方がサポート[Part-2],再発転移がん治療情報
https://www.akiramenai-gan.com/da_treatment/other/87181/

・加味逍遙散,ツムラ
https://www.tsumura.co.jp/kampo/list/detail/024.html#:~:text=%E2%80%9C%E7%94%A3%E5%A9%A6%E4%BA%BA%E7%A7%91%E3%81%AE%E4%B8%89,%E3%81%AB%E5%BA%83%E3%81%8F%E7%94%A8%E3%81%84%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

・がん薬物療法と医療用漢方製剤,日本産婦人科医会
https://www.jaog.or.jp/note/13%EF%BC%8E%E3%81%8C%E3%82%93%E8%96%AC%E7%89%A9%E7%99%82%E6%B3%95%E3%81%A8%E5%8C%BB%E7%99%82%E7%94%A8%E6%BC%A2%E6%96%B9%E8%A3%BD%E5%89%A4/

・がんと漢方,からだのとしょかん通信
https://www.niigata-cc.jp/facilities/documents/tuushin53.pdf

・抗がん剤の副作用を軽減する漢方薬,がんサポート
https://gansupport.jp/article/treatment/alternative/kampo/4230.html

・(難治性)口内炎 × 半夏瀉心湯[漢方スッキリ方程式(5)],日本医事新報社
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=7676

・がん治療中の辛い症状は漢方薬でも改善できる!,QLife漢方
https://www.qlife-kampo.jp/cancer/story7964.html