漢方によるがん治療講座 | 体を変える、がん治療のもう一つの選択肢
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漢方によるがん治療講座。体を変える、がん治療のもう一つの選択肢

漢方薬は慢性疾患や体質改善に効果があり、いくつかの原料を組み合わせると様々な効果を得られます。抗腫瘍効果のある生薬と副作用の少ない生薬を組み合わせることで、がんとなった体に対して機能の改善をもたらします。
以上のように、漢方薬はがん治療のもう一つの選択肢になり得ます。がんに「漢方薬を使うこと」について、本記事をぜひご覧ください。

1.漢方医学とは

1-1.漢方医学の概要

漢方医学は東洋医学に分類され、5・6世紀に中国から伝来した中国医学に由来すると言われています。16世紀室町時代以降に日本国内で独自に発展していったのち、江戸時代に流入した西洋医学と対比して漢方医学と呼ばれるようになりました。中国医学では、陰と陽の相反する2つのバランスが崩れることで病気になると考えられています。そのため、中国医学に由来する漢方医学においても心身のバランスが重要だとされ、今では現代医学と組み合わさり、患者のQOL向上に寄与しています。

1-2.西洋医学と漢方医学の違い

東洋医学は「バランス」が重視され、病気を予防することに主眼が置かれているのに対して、西洋医学は、中世ヨーロッパで発達し、解剖学や生理学がもととなり、病変の除去に主眼が置かれています。この西洋医学が現在の現代医学として先進国の主流となっています。

1-3.東洋医学の強み

東洋医学は、身体の内側からの治療や病気の予防が主な役割です。有名なものでは、鍼灸や漢方、あんまや柔道整復などがあります。東洋医学は、西洋医学よりも時間がかかりますが、身体への負担が小さく、副作用の少ない治療法です。また、病人でない人も対象となることが、東洋医学の特徴であると言えます。東洋医学と西洋医学はそれぞれ得手不得手があるため、それぞれを補い合うように用いられています。

2.がんってなに?

2-1.がんの概要

現代の日本では2人に1人はがんになると言われるほど、がんは国民的な病気となっています。かつては、がんを宣告されると絶望的だと言われていましたが、治療成績は年々改善され、患者のQOL向上にも力が注がれています。さらに、がんの早期発見早期治療のための技術革新も進んでいます。
では、がんとはどのような病気なのでしょうか。がんとは正常な細胞が何らかの刺激により遺伝子に変異が生じて、がん細胞と呼ばれる異常な細胞となります。多くの場合そのがん細胞は無限に増殖する能力をもち、時間と共に無秩序に増殖します。がんになった臓器は、本来の役割を果たせなくなります。それにより、未治療であれば生命の維持ができなくなり、死に至ることがあります。
タバコや飲酒によりがんが誘発されるのは有名ですが、食事、感染症、肥満、遺伝的要因など多くの原因があります。そのため、がんの完全な予防はできません。

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2-2.がんの治療方法

がんには4大治療があります。この章では、4大治療とその他の治療について説明します。

①外科的治療

外科的治療は最もイメージしやすい治療法ではないでしょうか。一般的なイメージではメスで切開手術をおこない、がん組織を切除するといったものではないでしょうか。もちろんそのような手術法もありますが、近年ではそのような治療は患者への負担が大きいため、減少傾向にあります。代わりに多く用いられている手術は、内視鏡手術やロボット手術です。
内視鏡手術は数センチの切り口を数個作り、その切り口からカメラと手術用の器具を挿入し、病変部位を取り除いていきます。患者への負担が小さく、多くの手術で用いられています。
ロボット手術は「ダビンチ」や国産の「hinotori」が用いられています。これらのロボットは近年登場したものであり、日本ではこれらを用いた手術の保険適用はまだ少ないですが、患者への侵襲が最も少なく正確な方法だと言えます。ただ、これらのロボットは高価であり、設置されている病院はまだまだ少ないのが現実です。

②放射線治療

放射線治療は単独で行われることもありますが、他の治療と併用することで治療成績が向上すると知られています。
放射線治療はがん細胞に放射線を照射することで、がん細胞を死滅させる治療方法です。がん細胞は正常細胞よりも放射線の影響を受けやすいので、選択的にがん細胞を殺傷することができます。一般的には外部から照射をしますが、体内に放射線照射器具を入れて照射する方法もあります。照射自体に痛みはなく、患者への負担は小さい治療です。

③化学的治療

化学的治療は、抗がん剤などの薬を用いて、様々な機序によりがん細胞を死滅させていきます。前述の外科的治療や放射線治療と違い、薬を用いた治療ですので、全身のがん細胞に作用します。そのため、進行したがんや全身に転移したがんに有効です。ただ、効果は個人差が大きく、有効でないこともあります。また、多様な副反応もあることが知られています。

④免疫治療

免疫治療は私たちの「免疫」を強化する治療方法です。免疫とは異物や悪さをするものを排除する能力のことです。この治療方法は2018年に 本庶 佑 氏が「オブジーボ」という治療薬でノーベル賞を受賞したので記憶にある人もいるのではないでしょうか。この薬はがん治療に画期的なものであり、これまで3大治療と言われていたがん治療に新しい可能性を示しました。近年確立した治療法ですので、保険適用はまだまだ少ないですが、がん治療での新しい選択肢となりました。

⑤代替療法

近年ではインターネットの発達により、多くの人が代替療法に関心を持ち、また実践しています。代替療法は食事療法、健康食品・サプリメント、漢方医学の鍼灸・整体、瞑想や気功などの心理療法など多岐にわたります。その中でも代替療法としてしばしば用いられているのが、健康食品・サプリメントです。
健康食品・サプリメントはビタミン類やニンニク・生・朝鮮人参・大豆など食品由来のものがあります。こういったものは一見体に良さそうですが、既存の4大治療と併用しないように推奨されているものもあります。例えばニンニクは血流をよくする作用があるため、外科的治療をする場合は出血量が増加する懸念があります。また、大豆の中にある大豆イソフラボンは女性ホルモンに類似しており、婦人科疾患がある場合は、大豆の摂取は推奨されません。
また、東洋医学の鍼灸・整体自体にがん細胞の縮小効果は望めませんが、人の本来の免疫力を高めることでがん予防をしたり、痛みを和らげる治療もあります。
ただ、ほとんどの代替療法の有効性の検証はされておらず、過大に広告されていることもあります。病人の心の隙に付け込む悪徳商法も後を絶ちません。そのため、代替療法を検討されている人は、その治療法が特定の団体と関係がないか、利害関係のない信頼のできる第3者に検証されているかなどを十分調べたうえで、代替療法を受けることをお勧めします。

3.漢方医学によるがん治療

3-1. 漢方治療とは

前述した鍼灸治療や整体を含む、西洋医学に対照的な中国や日本の伝統的な医学を東洋医学と言います。この東洋医学で用いられるのが、漢方薬です。この章では、漢方薬に焦点を当てて解説していきます。
西洋医学で用いられる薬は「病気」を対象にするものですが、漢方薬は「人」を対象にしています。漢方薬はそれぞれの人、体質に合わせて、どの薬を使うかが選択されます。肩こり、冷え性、便秘などのような病気とまでは言えない体質について、特に有効だとされています。
漢方薬は植物由来の生薬、動物由来のもの、鉱物由来のものなどを組み合わせることで、個別に最適化され作られます。
繰り返しになりますが、漢方薬を含む漢方医学は未病に効果を発揮します。そのため、西洋医学では病気として扱わずに治療が難しいものであったり、西洋医学の薬では副作用が強く治療の継続が難しい場合に漢方薬という選択をすることができます。具体的には、冷え性、ふらつき、倦怠感、虚弱体質のような西洋医学での治療が難しい未病に有効です。また、治療薬に対してアレルギーや抵抗性のある人へも有効とされています。治療が長期になる気管支喘息やアレルギーにも効果があると言われています。

3-2. 漢方でできるがん治療

近年ではがん治療にも漢方薬が有効であると報告されています。がんの縮小効果に対する科学的証明は西洋医学の治療方法に比較して有名ではありません。ただ、漢方薬を補助的に用いることで、患者のQOL向上が期待できます。そして漢方薬も万能ではないので、「漢方薬で治す」のではなく、「漢方薬も使って治す」というような考えがわかりやすいかも知れません。
西洋医学の薬の多くは特定の細胞や組織を狙うのに対して、漢方薬は体全体に効果を示すものが多く、がん治療において漢方は次のように用いられます。

①治療薬による副作用の軽減や、白血球・血小板数を増加させることで化学的療法や放射線治療のサポートをする。
②治療後の転移・再発防止や腫瘍の増大抑制。
③食欲不振や体力消耗に対するサポート。
④がんによる痛みの軽減。

具体的な漢方薬として、補中益気湯や十全大補湯は本来の免疫機能を向上させることで抗腫瘍効果が期待できます。

3-3. 漢方薬の購入方法

漢方薬は一般的な薬のように錠剤やカプセル、エキス剤などがあり、クリニックで処方されるか、薬局で購入することができます。一部の漢方薬は保険適用されているので、病院やクリニックで処方を受けるとお得に服用できます。ただし、漢方薬について十分な知識のある医者や薬剤師は少ないので、大学病院のような大きな病院や、漢方治療が有名なクリニックで漢方薬の服薬の相談をすることをお勧めします。 

3-4. 漢方治療を受けるうえでの注意点

漢方治療を受けるうえではいくつか注意点があります。
1つ目として、漢方薬にも副作用があることです。例えば、こむら返り予防に用いる芍薬甘草湯には副作用として偽性アルドステロン症があります。そのため、初めて飲む漢方薬は信頼のおけるしっかりとした医療機関で処方を受けることをお勧めします。
2つ目として、漢方薬の飲み合わせに注意することです。漢方薬は西洋医学と併用されていますが、飲み合わせが禁忌となることもあります。例えば、肝臓治療に用いるインターフェロンを服用しているときは、食欲不振のときに用いる小柴胡湯は禁忌となります。
3つ目として、効果が不明なものに気をつけるということです。前述したように、世の中の悪い人は弱った心の隙をつきます。そういった人の言うことを信じてしまうと、自らの健康だけでなく、多くの代償が伴うことになります。あくまでも、現代日本の医学的知見では、西洋医学に漢方治療を併用することが最も効果的であると理解してください。

4.まとめ

漢方医学は身体のバランスを重視し、病気の予防や体質改善に有効です。手段として、鍼灸治療や漢方治療などが用いられており、本記事ではこの漢方治療について解説してきました。
漢方薬は慢性的な疾患や体質に有効であり、多くの原料を組み合わせることで、様々な効能が得られます。がん治療では、抗腫瘍効果や副作用軽減作用のある漢方薬を組み合わせています。
以上のように漢方医学はがん治療のもう一つの選択肢になりえます。ただし、西洋医学だけに固執してはいけないように、漢方医学だけにも固執をしてはいけません。西洋医学と東洋医学をうまく組み合わせることで、大きな効果を得ることができるので、柔軟に考えていく必要があります。
そして、漢方医学を受けたいときは、信頼のできる病院を受診しましょう。

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