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抗がん剤治療をサポートする漢方薬。体内バランスを整えて負担を軽減する

日本人の死因として1位であるがんは、一生の間に2人に1人が何らかのがんになると言われ、誰でも発症する可能性がある疾患です。高齢化もあって患者数も増えてきている身近な病気でもあります。
がんの薬物療法では、主に抗がん剤が使用されますが、治療をサポートするために漢方薬を使用することがあります。
今回は、抗がん剤治療における漢方薬について解説します。
抗がん剤の副作用と対策法。仕組みと副作用、注意点などを解説

1.がん治療で漢方薬の使用が注目されている

漢方薬は、複数の生薬を伝統的なレシピによって組み合わせて作られた医薬品です。通常の医療用医薬品に比べると、複数の症状に効果があり、慢性的な疾患に使用されることがあります。
通常の医薬品と漢方薬を組み合わせて使用することにより、医薬品の副作用を抑えたり、通常の医薬品をサポートしたりできることが知られるようになりました。
漢方薬の効果が注目されるようになり、数多くの医療機関でも漢方薬が使用されるようになりました。がんの薬物療法でも漢方薬を導入する事例が増えています。漢方薬を利用することで、抗がん剤の効果を最大限発揮することも期待されています。

1-1.抗がん剤の副作用に対して漢方薬が使われる

抗がん剤を使用したがん治療では、吐き気や嘔吐、貧血、脱毛などさまざまな副作用のリスクがあり、薬剤によっては90%以上の確率で副作用があらわれるとも言われています。抗がん剤の副作用は、症状の強さによっては治療を妨げる要因にもなるので対策が必要です。
近年では、抗がん剤の副作用を軽減する目的で、支持療法が行われることが増えてきました。支持療法では、漢方薬が使用されることがあり、抗がん剤を使用して起こる副作用を軽減することでがん治療をサポートします。

1-2.漢方薬は保険診療が適用される

がん治療における漢方薬の使用は、医師の診断を受けて処方してもらうことで保険診療が適用されます。そのため、鍼灸治療など基本的には保険診療が適用されない治療に比べると、費用が抑えられるメリットがあります。
市販の漢方薬を使用する場合は、セルフメディケーション税制の対象となる場合もありますが、がん治療を受けている人は医薬品の効果に影響が起きる可能性もあるので注意が必要です。

1-3.他の治療薬と併用できる

一部の漢方薬を除いて多くの場合において、他の抗がん剤や支持療法で使用される医薬品と併用できます。また、放射線療法や外科手術など薬物療法以外の治療を受けている場合でも漢方薬を使用できることがあります。通常の治療法と漢方薬を併用することで治療の効果を高めたり、副作用を軽減したりすることが期待されています。
しかし、漢方薬は複数使用すると副作用のリスクがあったり、飲み合わせが悪い場合もあるので主治医に相談することが重要です。

2.がん治療で使われる漢方薬

漢方薬の効果が見直されるようになり、がん治療など医療の最前線でも漢方薬が活躍するようになりました。がん治療に漢方薬を取り入れることにより、がん治療に伴う症状を和らげることができます。一部の漢方薬は、臨床試験でも効果が実証されるようになり、今後も漢方薬の活用が普及することが予想されます。
こちらでは、抗がん剤の副作用に対して使用される漢方薬について解説します。

2-1.補中益気湯

がんの治療で行われる外科手術や放射線療法、化学療法などは身体的にも大きな負担がかかるため体力を消耗します。治療の前までは歩行ができていたのに、治療の負担により歩くことも難しくなるということもあります。特に、抗がん剤治療で見られる食欲不振は、放置していると栄養不足になり、体力や身体機能が低下するリスクを高めるので対策が必要です。
がん治療における食欲や体力の低下に使われる漢方薬として「補中益気湯」があります。補中益気湯は、胃腸の働きを高めて食欲を増加させる働きがあり、がん治療で起きやすくなる栄養不足の改善が期待できます。

2-2.十全大補湯

十全大補湯は、補中益気湯と同様に胃腸の働きを改善し、食欲不振などの症状を改善する漢方薬です。
漢方の考えでは、十全大補湯や補中益気湯は補気剤に分類され、生命活動の源である「気」を補うとされています。抗がん剤による倦怠感や疲労感に対しても処方されることがあり、外科手術や放射線治療後の回復のためにも処方されることがあります。
また、食欲不振による体力の低下を予防することで、免疫機能などの生理機能の低下を抑える効果が期待できます。

2-3.六君子湯

漢方薬のなかには、薬効を発揮する仕組みが解明されていないものも存在しますが、六君子湯は薬効の仕組みが解明されている漢方薬の一つです。六君子湯には、食欲を増進させるホルモンであるグレリンの分泌を促進させる働きがあり、脳の食欲を司る部位にも働きかけることで食欲を回復させることが知られています。
進行胃がんに対する抗がん剤治療の食欲不振に対して六君子湯を使用することで、食欲不振が軽減することも報告されています。また、外科手術後に伴う胃腸機能の低下や食欲不振に対しても六君子湯が有効であることが示唆されています。

2-4.半夏瀉心湯

半夏瀉心湯は、ストレスが原因である胃腸症状に対して使用されることが多い漢方薬です。非小細胞肺がん患者の抗がん剤治療で起きる下痢に対して、半夏瀉心湯を使用することで症状が改善されたことが報告されています。下痢以外にもみぞおちあたりのつかえ感や軟便に対しても効果が期待できます。
胃腸に関わる症状以外にも、口内炎に対しても積極的に半夏瀉心湯が使用されます。口内炎には、半夏瀉心湯を口のなかに含んでしばらくしてから飲み込んだり、お湯などで濃いめに溶かして綿棒に塗ったりして使用します。

2-5.牛車腎気丸

子宮がんや卵巣がんなどに使用されるタキサン系抗がん剤には手足のしびれが副作用としてあります。長年、手足のしびれに対して末梢神経を修復する作用があるビタミンB12が処方されていましたが、牛車腎気丸を使用することによって改善するという論文が発表されました。
牛車腎気丸は、足腰の慢性的な痛みやしびれ、排尿トラブルに使用されることが多い漢方薬です。筋肉や骨に栄養分を補給し、水分の代謝を改善する働きがあり、むくみやしびれを取り除くとされています。

2-6.芍薬甘草湯

芍薬甘草湯は、筋肉のけいれんや急な痛みを抑える働きがあり、こむら返りの特効薬としても知られています。こむら返り以外にも筋肉のけいれんが伴う腹痛や腰痛などにも使われ、抗がん剤の副作用である筋肉痛や関節痛にも効果があるとされています。

2-7.大建中湯

大建中湯は、お腹を温め消化管の働きを良くすることで、便秘や下痢などの胃腸症状を改善する作用があります。消化器外科で広く使用される漢方薬であり、手術後の腸管運動機能の低下予防にも効果があるとされ腸閉塞の予防効果も確認されています。
近年では、開腹手術の術後に大建中湯を処方することも増え、大腸がん患者にも使用されることがあります。

2-8.抑肝散

子どもの夜泣きなどに使われることがある抑肝散は、ストレスを和らげる作用があり、不眠や不安症状に対しても使用されることが増えています。
がんの治療や抗がん剤の副作用、再発、転移など患者は常に不安と闘っている状態です。心理的な負担も大きいものであるため、不眠に悩まされるケースも珍しくありません。睡眠導入剤や精神安定剤を使用することで不眠症状を改善できますが、ふらつきや依存性などの副作用のリスクも存在します。
そのため、精神安定剤や睡眠導入剤以外の選択肢として不眠に対して抑肝散を使うこともあります。

2-9.当帰芍薬散

冷え性で貧血やむくみ、月経不順、更年期症状などに効果が期待でき、婦人科でよく使われる漢方薬の一つです。がん治療におけるホルモン療法では、女性ホルモンの働きが抑制されるため、更年期における不安や抑うつ、不眠などの症状があらわれることがあります。当帰芍薬散は、ホルモン療法であらわれる副作用の軽減が期待できます。

2-10.桂枝茯苓丸

当帰芍薬散と同じく婦人科で使われる漢方薬で、冷え性や月経不順などの女性特有の症状に使われます。東洋医学の考えでは、桂枝茯苓丸は、滞った血の巡りを改善し、体の不調を改善します。がんのホルモン療法で起こるのぼせやほてりなどが改善することが報告されています。

3.漢方薬の副作用

漢方薬に対して安全なイメージを持っている人も多くいますが、医薬品であることには変わりないため漢方薬にも副作用は存在します。漢方薬の副作用によって抗がん剤治療ができなくなる可能性もあるので、漢方薬の使用にも注意が必要です。

3-1.偽アルドステロン症

7割の漢方薬に甘草が含まれており、グリチルリチンという成分が含まれています。グリチルリチンを大量に摂取することで、偽アルドステロン症を引き起こすことが知られています。偽アルドステロン症は、血圧を上昇させるアルドステロンというホルモンが分泌されていないのに高血圧やむくみ、脱力感などの症状があらわれる疾患です。
グリチルリチンは、多くの漢方薬に含まれており、肝臓の病気にも使用されることがあります。市販の風邪薬や胃腸薬にも含まれていることがあるため、複数の漢方薬や市販薬の使用には注意が必要です。

3-2.間質性肺炎

1989年に小柴胡湯という漢方薬で間質性肺炎の発症が確認されました。その後、小柴胡湯以外の漢方薬にも間質性肺炎の発症が報告されています。柴胡以外にも黄芩でも間質性肺炎のリスクがあるため、黄芩を含んだ半夏瀉心湯などがん治療で使用される薬剤の使用で呼吸の苦しさなどを感じた場合は医師に相談することが重要です。

3-3.肝障害

体内に入った医薬品は、肝臓で代謝されてから体外へ排出されるため、肝機能に問題が生じると医薬品をうまく分解できずに副作用があらわれる危険性が高くなります。そのため、漢方薬によって肝障害が起きると抗がん剤治療ができなくなることもあります。
黄芩を含んだ漢方薬によって肝障害が起きる頻度が1.0%あると報告もされているため、黄疸ができたり、血液検査に問題があったりしたときは漢方薬の使用を中止したほうが良いでしょう。

4.漢方薬を使用する際の注意点

がん治療に使用される漢方薬は、医薬品であるため副作用のリスクがあるので注意する必要があります。漢方薬を適切に使用しない場合、がん治療が続けられなくなる可能性もあり、生存率にも影響する可能性もあります。こちらでは、がん治療における漢方薬の使用について注意点を解説しますテキスト

4-1.漢方薬はがん治療のサポートである

がん治療の中心的なものとして外科手術や放射線治療、抗がん剤を使用した薬物療法があり、漢方薬はサポートとしての役目が期待されています。がん治療において漢方薬は、抗がん剤の副作用を軽減したり、がんによってあらわれる症状を緩和したりする支持療法という位置付けにあります。
漢方薬自体にがんを抑制する作用を示すデータも存在しないため、漢方薬のみでがんを治療できません。

4-2.自己判断での漢方薬の使用は危険

漢方薬は、市販されているものがあるため比較的入手がしやすい医薬品です。そのため、医師の診断によらず、患者の判断で漢方薬を購入できるため、思わぬ副作用や薬の飲み合わせの問題が生じる可能性もあります。
がん治療と並行して漢方薬を服用したい場合は、主治医に相談するか、漢方外来のある医療機関へ受診してください。

4-3.漢方薬を使用する場合はお薬手帳に記載

漢方外来のある医療機関で漢方薬を処方してもらったり、複数の医療機関を受診したりする場合は、処方された漢方薬や医薬品をお薬手帳に記載してもらうほうが良いでしょう。
処方された漢方薬をお薬手帳に記載することで、漢方薬と抗がん剤などの医薬品との飲み合わせを医師や薬剤師に確認してもらえます。
お薬手帳は、医薬品の安全な使用のためにも必要なアイテムとなっているので、活用してみてください。

5.まとめ:漢方薬に興味があるなら相談してみよう

がんやがんの治療によって倦怠感や食欲不振、下痢や便秘などさまざまな症状があらわれます。精神的、身体的な負担がかかり気力や体力、身体機能の低下なども伴うため、場合によってはがん治療の継続にも影響する可能性があります。
漢方薬には、東洋医学の考えから体内のバランスを整えて、がん治療に伴う負担を軽減する働きがあるため、多くの医療機関でもがん治療に漢方薬が導入されるようになりました。漢方薬を使用した治療を受けたい場合は、主治医に相談してみてください。
抗がん剤の副作用と対策法。仕組みと副作用、注意点などを解説

●参考文献
がん薬物療法と医療用漢方製剤,日本産婦人科医会
https://www.jaog.or.jp/note/13%EF%BC%8Eがん薬物療法と医療用漢方製剤/
大腸癌手術症例における大建中湯を用いた術後リハビリテーションの検討,霞ヶ浦医療センター外科
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjgs1969/38/6/38_6_592/_pdf
がん患者に東洋医学(漢方治療・鍼灸治療)を応用,近畿大学病院
https://www.med.kindai.ac.jp/diseases/dummy4.html
六君子湯による周術期管理へのサポート,外科と代謝
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/56/2/56_55/_pdf/-char/ja
注意しておきたい漢方診療上の副作用,ファルマシアvol,56 No.3 2020
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/56/3/56_198/_pdf/-char/ja
がんの緩和ケアと漢方,ファルマシアvol,56 No.3 2020
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/56/3/56_223/_pdf/-char/ja
重篤副作用疾患別対応マニュアル偽アルドステロン症,厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1019-4d9.pdf
漢方薬にも副作用はありますか?,中野区医師会
https://www.nakano-med.or.jp/topics/2018/11.php