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緩和ケアの種類と特徴!いつから始めればよいかについても徹底解説
がんは、日本人の死因として最も多く、2人に1人が発症するとも言われている重大な疾患です。がんと診断されたとき、心理的にショックを受け、現実を受け入れるだけでも大変なことです。がんに対して前向きに立ち向かうためにも、苦痛を取り除くアプローチが必要とされています。
がん治療を続けるために患者のつらい気持ちを軽減するために行われる緩和ケアは、がんに対する重要な治療法の一つと言えます。

今回は、がん治療における緩和ケアの効果と開始時期、特徴などを解説します。

1.緩和ケアは早い段階からはじめる

緩和ケアは早い段階からはじめる

がんの症状が進行して起こる痛みや吐き気などつらい症状は、対策が遅れるほど重症化する可能性があります。がんがわかった時から早い段階で対応することで、症状の改善を早めることが期待できます。そのため、緩和ケアは、がんとわかった時から並行して行ったほうがよいでしょう。つらいことを我慢することで体力と気力の消耗にもつながるので、問題があったり、不安なことがあったりした場合は相談することが重要です。

1-1.日常生活を取り戻すことが求められる

がんだとわかったとしても、生活を続ける必要があります。前向きに生活するためにも心理的なサポートも必要です。また、ご飯を美味しく食べる、夜にぐっすり眠るなどの生活をできるだけ維持し、体力を回復させることも重要です。仕事を続ける場合は、職場などの関係機関との調整をソーシャルワーカーと相談できます。緩和ケアを早めに受けることで日常生活への影響を最小限にできるとされています。

1-2.緩和ケアは終末期以外にも行われる

がんの終末期に行われるターミナルケアは、がんの積極的な治療や延命を目的とせず、がんによる痛みや死ぬことへの恐怖など身体的、精神的なつらさをできるだけ減らして残りの人生をより良いものとするケアです。ターミナルケアは、終末期の患者の体と心の負担を減らすことを目的としており、緩和ケアの概念の一部分と言えます。ターミナルケアは、病院や介護施設、自宅で受けるものがあります。本人の希望や家族の理解、身体の状態などによってターミナルケアを受ける場所を考えることも必要です。

1-3.専門家がチームを組んでケアすることが求められるテキスト

緩和ケアには、さまざまな専門職が協力して患者のサポートを行っています。医師や看護師以外にも薬剤師や管理栄養士、理学療法士、ソーシャルワーカーなどの職種ががん治療における問題を解決します。
薬剤師は、抗がん剤の服用方法の変更や薬剤の変更を医師に提案することで副作用を減らすことを目的としています。また、抗がん剤の副作用によって食事が摂れなかった場合、管理栄養士は食べやすい食事メニューを考えます。体力の消耗による身体機能の低下を予防するために理学療法士のリハビリは重要です。医療費などの社会的なアプローチにはソーシャルワーカーが活躍します。
多くの職種が連携することで緩和ケアが成り立っていると言えます。

2.緩和ケアの目的は?

緩和ケアの目的は?

がんとわかった時、心理的にショックを受ける人も多く、患者本人だけではなく家族も悲しみや苦しさを感じることもあります。また、がんの進行によってさまざまな症状があらわれ、治療の副作用によっても体調を崩すこともあります。治療費の問題や将来への不安などストレスから自暴自棄になったり、治療に対して前向きに慣れなかったりする人もいます。そのため、がん治療の継続のために患者がつらさを感じている問題を解決することが重要だと考えられるようになりました。緩和ケアは、がんに伴う身体的、精神的、社会的負担、今までの人生に対する苦悩や死生観に対する苦悩などあらゆる苦痛を取り除くことで患者に自分らしく日常を過ごしてもらい、がん治療をサポートする治療です。がんの症状や副作用などによって生じる問題に対して専門家がチームを組んで対処することで、つらい気持ちを減らして治療に前向きに取り組んでもらうことが期待できます。

2-1.身体的な負担を減らす

がんが進行して体の組織を破壊することで痛みが強く出ることもあります。がん性疼痛と呼ばれる痛みは、通常の鎮痛剤では十分に抑えることができなくなる場合もあります。痛みが継続すると夜も十分に眠れなくなり、満足に動くことも難しくなります。緩和ケアでは、医療用麻薬などでコントロールできない痛みを減らし、日常生活への復帰を目指します。
その他にも、抗がん剤の副作用による吐き気に対して制吐剤を使用して抑えることで食事量も確保できるようにガイドラインが制定されています。

2-2.メンタルケアも重要

がんと診断されると心理的に動揺したり、将来に不安を感じたりすることもあります。現実を受け入れるまでに大きなストレスを感じることも考えられます。過剰なストレスが続くと不眠や抑うつ症状など身体への負担にもつながるので、早めにメンタルケアをしていくことも重要です。緩和ケアにおけるメンタルケアは、精神科医による治療や臨床心理士によるカウンセリングがあります。

2-3.社会生活における問題にもアプローチする

がんの治療は、長期間にわたって続く場合もあります。働けなくなる期間もある程度存在するため、医療費や生活費などのお金の面での不安を感じることもあります。医療費や仕事など社会的な問題にアプローチする専門家がソーシャルワーカーです。ソーシャルワーカーは、医療費に関することや自治体が行っている助成制度などを教えてくれたり、治療を続けながら働く場合の職場などの関係機関との調整などにも関わったりします。
医療費が高額になる場合、医療費がある一定金額までの支払いで済む高額療養費制度があり、抗がん剤による脱毛に対応するためのウィッグの費用を助成する制度も存在します。自治体によって受けられる制度が異なるので、ソーシャルワーカーに相談してみると良いでしょう。

2-4.スピリチュアルペインへの対応

人が死を目前にした時に感じる過去への後悔や死後の世界への思いなどさまざまな苦悩がスピリチュアルペインです。スピリチュアルペインは、個人の死生観や宗教観など死に対する想い、苦悩であるため、ケアをする人は患者との信頼関係を築くことが求められています。
身体的なケアをする医療職以外にも、死への恐怖を和らげるためにお寺の住職や神父などの宗教職が関わっていくケースも存在します。

3.緩和ケアによって期待できる効果

緩和ケアによって期待できる効果

がんの治療よって患者の身体や精神に負担がかかることもあります。がん治療に関わる問題を解決して負担を軽減する緩和ケアは、がん治療を続けるために重要な役割を果たしています。緩和ケアによって治療効果を最大限に引き出したケースも存在します。

3-1.緩和ケアによって治療に前向きになれる

がんの症状や抗がん剤の副作用によって体力を消耗したり、心理的にダメージが蓄積することもあります。心身の問題に対してさまざまな専門職がケアをすることで、がん治療を継続する気持ちを回復させることにもつながります。つらい症状を抑えることで、治療に対しても前向きになることも期待できます。

3-2.延命効果も期待できる

緩和ケアを行うことで、がんによって生じる症状を抑えて、体力の消耗を抑えたり、抗がん剤治療を受けられる状態に回復させたりすることも可能です。
例えば、緩和ケアで使用される医療用麻薬の中には、肺がんによる呼吸困難感を抑える効果があり、症状を安定させることで新しい治療を試すことも検討できます。
2010年にアメリカで発表された研究では、肺がん患者に対して抗がん剤治療と緩和ケアを同時に行うことで、抗がん剤のみの治療を行った場合と比べて3ヶ月ほどの延命効果があったと報告されています。3ヶ月の延命期間で新薬が認可される可能性もあり、緩和ケアによって新しい治療法を試すチャンスが生まれることもあります。

3-3.生活の質を向上させる

がんの治療に伴う問題を解決していくことで、限りなく普通に近い生活を送っていくことが治療の継続のためにも重要です。緩和ケアは、心と体のバランスを整えて、自分らしく生活するためにも必要なものとなっています。痛みや副作用などさまざまな問題に対して多くの職種が連携して対処することで、患者の日常生活をサポートできます。

3-3.家族へのケアも存在する

緩和ケアは、患者本人以外にも家族に対するケアが存在します。がんによって心身ともに憔悴していく患者を見て、家族もショックを受けたり、将来に対して患者同様に悲観したりすることもあります。家族へのサポートをすることで、患者を支える力にもなるので治療を続けるためにも重要です。
家族への相談窓口を設置している病院も増えてきているので、家族ががんになったという人は相談してみた方が良いでしょう。

4.緩和ケアで行われるケアとは?

緩和ケアで行われるケアとは

緩和ケアは、病院以外にも自宅でのケアを受けられます。自宅でのケアを受けるためには、訪問診療と訪問看護、訪問介護など自宅で医療サービスを受けられるように手続きを進めておくことが必要です。自宅でのケアによって、自分らしく日常生活を送りやすいというメリットもありますが、患者の状態や家族との協力関係によって入院や通院でのケアが推奨される場合もあるので総合的に判断することが重要です。緩和ケアは、医療用麻薬や制吐剤など医薬品の使用によって行われることがありますが、カウンセリングやリハビリなどさまざまなケアも受けられます。

4-1.医療用麻薬による除痛

医療用麻薬という名称から中毒や依存症をイメージすることもありますが、がんによる痛みを抑制するときに使う場合には、依存や中毒が起こることがないと言われています。
がんの症状が進行することで起こる痛みは、通常の鎮痛剤では効果を感じにくくなっていることも少なくありません。医療用麻薬は、がん患者の痛みを軽減し、日常生活を過ごすためにも必要なものとなっています。

4-2.食事に対するケア

痛み以外にも、がんや抗がん剤の使用によってさまざまな症状や副作用があらわれることがあります。吐き気や嘔吐は、抗がん剤の代表的な副作用の一つであり、食欲の低下によって思うように食事が摂れないことも患者の負担になります。食事を摂る時間や回数、食事内容など患者の状態に合わせて工夫していくことが重要です。また、口の中の衛生状態が悪いと、食欲の低下の原因となることもあるので、口腔内のケアも必要です。

4-2.リハビリ

がん診療ガイドラインにおいて、乳がんや前立腺がん、血液がんの患者の倦怠感について運動トレーニングが有効であるとされています。運動をすることで、筋肉量を維持し、活動的な日常生活を送ることにもつながります。そのため、緩和ケアにおいてもリハビリも重要なケアの一つです。

4-3.カウンセリング

がんと診断された精神的ショックや治療への不安などに対して、カウンセリングを行っていくことも緩和ケアの一つです。がんの治療中でも自分らしく日常生活を過ごすためにも、心のケアをしていくことは重要なことです。
また、患者本人以外にも支えとなる家族に対しても心理的なケアを行っていくことが必要になる場合もあります。家族のメンタルケアを行っていくことで、患者を支えていく気力の回復にも期待できます。

4-4.レスパイト・ケア

患者の治療期間が長期間になると、支えとなる家族が心身ともに疲弊することもあります。定期的な検査と合わせて、医療機関と介護福祉機関が連携してレスパイト・ケアが行われます。レスパイト・ケアは、医療機関への入院やショートステイの利用によって、一時的に自宅での療養をしている患者の家族の心身の疲労を軽くするためのケアです。

4-5.アピアランスケア

がんや抗がん剤の副作用などがんを治療していくうえで見た目が変化することがあります。脱毛や乳房の切除、皮膚の変色などさまざまな変化が起こる可能性があり、患者のメンタルにも影響します。アピアランスケアは、がんによる見た目の変化に対してウィッグや化粧などで対応します。見た目の変化をケアしていくことで、患者のつらさを減らすことが期待できます。

5.まとめ:緩和ケアは早期に受けることが重要

緩和ケアは早期に受けることが重要

医師からがんと診断されたとき、現実を受け入れることが難しいこともあります。一人で悩むことで、大きなストレスを感じてしまうこともあります。家族に伝えても心配させてしまうと考えてしまうかもしれませんが、一人で抱え込むには精神的にも負担が大きいものとなります。また、抗がん剤の副作用などでつらさを感じることもあります。副作用によってつらい思いをすると治療のモチベーションを保つことも難しくなるかもしれません。緩和ケアは、がんによる心の負担を軽くする治療でもあり、早めにはじめることでがんのつらさを減らすことにも期待できます。一人で悩まずに主治医や病院の相談窓口、家族などに相談した方が良いでしょう。

参考URL:
がんと言われたときから始まる緩和ケア,がん情報サービスhttps://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/relaxation/index.html
緩和ケアは「がんの治療」と一緒に始めます,日本緩和医療学会http://www.kanwacare.net/kanwacare/point02.php
緩和ケアについて知ろう,東北大学病院がんセンターhttps://cancer-miyagi.jp/kanwa_sp/
終末期患者から学んだスピリチュアルペインとケア,新潟がんセンター病医誌https://www.niigata-cc.jp/facilities/ishi/Ishi44_1/Ishi44_1_27_31.pdf
緩和ケアガイドブック,日本医師会https://www.med.or.jp/dl-med/etc/cancer/cancer_care_1-3.pdf
看護とカウンセリング-緩和医療におけるカウンセリング-,日本赤十字看護学会誌https://endai.umin.ac.jp/cgi-open-bin/hanyou/parm/jrcsns/pdf_download.cgi?articleid=D00023-00001-10092
がん診療ガイドライン,日本癌治療学会http://www.jsco-cpg.jp/rehabilitation/guideline/#I
アピアランスケアによる生活の質向上 に向けた取組,厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000559470.pdf