原因や特徴・初期症状について
すい臓がんの基本情報
すい臓がんとは
すい臓がんの大半(約90%)は、すい管に生じます。したがって、一般にすい臓がんやすいがんと診断された人はすい管がんである場合がほとんどです。すい臓がんが最も転移しやすい場所は肝臓、腹膜、そして肺です。
すい臓がんは、すべてのがんの中で生存率が最も低いがんのひとつです。すい臓がんと診断された人の5年生存率は全体で10~20%とがんの中でも極めて低くなっています。このがんになった人の生存率が極端に低い理由にはいくつかあります。
- 理由1:発見するのが難しく発見された時にはかなり進行している。
- 理由2:すい臓がんを発症する理由がまだはっきりとわかっていないため、普段から予防的な生活を送ることができない。
- 理由3:有効な治療法がいまだにわかっていない。つまり治療法がほとんどないに等しい。
これらの理由がすい臓がんの極端に低い5年生存率に反映されています。
すい臓がんの分類
1.すい管がん
すい臓の役割は、血糖をコントロールするホルモンを作ることのほかに、消化を助ける酵素(すい液)を十二指腸に分泌することです。そのすい液を運ぶ管をすい管と言い、ここにできるすい管がんが、すい臓がんの大半を占めます。
2.その他
粘液産性すいがん(すい管がんの特殊型で粘液を多量に作るがん)、島細胞がん(ホルモンを分泌する細胞のかたまりであるランゲルハンス島に発生する内分泌系のがん)などがありますが、発症率は低く、すい管がんに比べれば悪性度が低いです。
すい臓がんの原因
すい臓がんを発症する原因ははっきりとはわかっていません。しかし、すい臓がんが喫煙と関係していることは、すい臓がん患者についての統計から出ています。これ以外には、近年の急速な食生活の欧米化、野菜の摂取不足、自動車から出る排気ガスなどが危険因子として考えられています。また、糖尿病患者や慢性膵炎の患者がすい臓がんになりやすい傾向があると言われています。
しかし、アルコールやコーヒーの摂取とすい臓がんの発症が関係するかどうかは明らかにはなっていないそうです。いまでは、がんが遺伝子の突然変異によって生じることは明らかですが、近年、すい臓がんの発症に深く関係している遺伝子も次々と発表されています。
現在、すい臓がんに関係する遺伝子の変異を調べることによってすい臓がんを早期に発見する方法が、各国で研究・開発されています。
すい臓がんの症状
すい臓がんが早期に発見されにくい一番の理由は、自覚症状がなかなか現れないためです。がんが進行してくると、胃のあたりや背中が重苦しい(腹痛、腰背部痛)、お腹の調子がわるい、食欲の減衰などを自覚します。
ほかにも、体重が減少する、全身の皮膚や白目が黄色くなる、尿の色が濃くなる、といった症状が現れることがあります。膵頭部、すなわちすい臓の十二指腸側にがんが生じた場合(全体の約80%)には、患者は閉塞性の黄疸を示すことが多くなります。
他方で、これとは反対側の膵尾部にがんが生じた時には、黄疸は生じず、患者は疼痛を訴えることが多いとされています。また、下痢や便秘、倦怠感や抑うつ状態などの精神症状が初期に現れることがあります。進行期には、腹水がたまったり、消化管からの出血を引き起こす場合があります。なお、慢性膵炎もすい臓がんとよく似た症状のため、混同されることがあります。
すい臓がんの診断
すい臓がんの検査・診断には、血液検査、CT検査、内視鏡検査、組織検査などがあります。しかし、最初に現れるすい臓がんの症状は、腹部の鈍い痛みなどの漠然とした消化器の症状である場合が多いため、この段階ではすい臓の検査は行わずに、胃炎や胃潰瘍、胆石がないかどうかを調べます。
1.腹部超音波検査
漠然とした症状のある段階では超音波(エコー)検査などで胃炎や胃潰瘍、胆石などがないかどうかを調べます。もしこれらに異常がなければ、それ以上の検査をしない場合もあります。
2.血液検査
初期段階のすい臓がんでは、血液検査を行っても異常が発見されることはほとんどありません。胃痛を抑える薬などを投薬されて一旦は症状が落ち着きますが、数週間経つと再び痛みが出始め、再度受診するとすい臓がんが進行しているということになります。
3.CT検査
超音波調査の結果、すい臓がんの疑いがある場合にはCT検査が行われます。超音波よりもはっきりと中の様子を調べることができます。ただし直径2センチメートル以下の小さなすい臓がんの場合、この方法で見つけることは困難です。
4.超音波内視鏡検査
詳細に部位を調べるために、超音波装置付きの内視鏡を十二指腸に挿入して、中から臓器に超音波をあてます。負担のかかる検査となりますが、体外からの超音波検査に比べて精度が高く、重要な検査です。
すい臓がんの病期(ステージ)
I期 | がんはすい臓内にとどまっている状態。 |
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II期 | がんは十二指腸や胆管、周囲の組織に浸潤しているが、転移はしていない。 |
III期 | がんがリンパ節に転移している。 |
IV期a | がんが胃、脾臓、結腸、大血管へ広がっている。 |
IV期b | がんが遠隔転移している。 |
すい臓がんの原因
Ⅰ期
がんがすい臓内にとどまっている場合、外科手術が第一選択。放射線や抗がん剤治療の併用も。
Ⅱ期・Ⅲ期
放射線や抗がん剤治療の単独または併用。緩和ケアもあり。
Ⅳ期
抗がん剤の緩和ケア、対症療法。