原因や特徴・初期症状について
悪性リンパ腫の基本情報
悪性リンパ腫とは
悪性リンパ腫は、白血球の中のリンパ球ががん化したもので、リンパ節が腫れたり腫瘤ができる病気です。臓器移植を受けて免疫抑制剤を使用している人や、HIVウイルス感染者など、免疫力の低下している人はリスクが高いといわれています。
悪性リンパ腫を発症すると、がん化したリンパ球が急速に増えて、白血病と似た症状を示します。リンパ腫を広義の白血病に含める場合もありますが、白血病とリンパ腫では、がんが増殖する場所が異なります。白血病ではおもに骨髄または血液中でがん細胞が増殖しますが、リンパ腫ではリンパ節を中心としたリンパ組織の内部で増殖します。
また、リンパ節以外に、脾臓、胸腺、扁桃腺などもリンパ球が集中するリンパ組織の一部であるため、これらの場所でもリンパ腫は発症します。日本では毎年約1万人の悪性リンパ腫患者が発生し、年々増加しています。小児もこのがんにかかる可能性があります。
悪性リンパ腫の分類
リンパ腫は、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」に大きく分けられます。
1.ホジキンリンパ腫
ホジキン病は特殊な細胞(ホジキン細胞およびリード・スタンバーグ巨細胞)がリンパ節の中で増殖する病気です。これらの細胞のほとんどはB細胞ががん化したもので、通常のリンパ球よりも大型のものになります。
2.非ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫は、リンパ節の中にリード・スタンバーグ巨細胞を含みません。
日本では年間1万人ほどが発症し、年代別では50歳以上がピークとなっています。非ホジキン腫は、がん細胞の増殖の仕方によって低悪性度非ホジキンリンパ腫と中~高悪性度非ホジキンリンパ腫の2つに大別できます。
悪性リンパ腫の原因
悪性リンパ腫は、リンパ球細胞の正常な分化が起こらなくなるために発症します。しかしそのきっかけそのものが何から起こるかは、解明されていないものが大変です。
とはいえ、発症の引き金となるものが明らかになっているものもあります。悪性リンパ腫の発症に関係するウイルスがエプスタイン=バー・ウイルス(EBウイルス)」です。近年、このウイルスのうちの一部がリンパ球をがん化させるはたらきがあることがわかりました。
ホジキン病のほかに、非ホジキンリンパ腫の一部でも、このウイルスの影響が確認されています。しかしこのウイルスは、一般に成人の90%以上に感染しているごくありふれたものです。そのうちのわずかな人々がなぜ悪性リンパ腫になるかの原因は未だにほとんどわかっていません。
このほかに、非ホジキンリンパ腫を引き起こすものとして、特定の化学物質との接触や、アルコール・ドラッグの摂取等が考えられます。
悪性リンパ腫の症状
悪性リンパ腫は初期の段階ではほとんど症状が現れず、自覚症状だけで早期に発見することが難しいです。健康診断などで偶然発見される場合が多いです。
一般に白血病の症状とよく似ている部分があります。特徴的な症状は、リンパ節の腫れです。主にわきの下、鼠径部、首筋などのリンパ節に腫れが生じます。その他の症状としては、
1. 全身の倦怠感
2.原因不明の発熱
3.大量の寝汗
4.体重の減少
5.せき、息切れ
6.全身のかゆみ
7.脾臓の腫れ
8.(リンパ腫がリンパ節から他の臓器に転移した場合)臓器の腫大
などがあげられます。
悪性リンパ腫の診断
1.リンパ節生検
わきの下や鼠径部のリンパ節を触診します。リンパ節に腫れがあれば、局所麻酔をかけてリンパ節の組織の一部を採取します。これを顕微鏡下で観察してリンパ球の異常増殖の有無を調べます。場合によっては開腹手術でリンパ節や臓器の状態を確認します。
2.血液検査
悪性リンパ腫を発症すると、LDH(乳酸脱水酵素)の値が上昇します。また、近年可溶性インターロイキン2受容体が悪性リンパ腫の腫瘍マーカーとして注目されています。
3.画像診断
CT、MRI、超音波検査を行い、頸部、胸部、骨盤部などのリンパ節の腫れ、脾臓や肝臓の腫大を確認します。
4.リンパ管造影
鼠蹊部のリンパ節に造影剤を注入し、X線撮影をします。病巣の状態を細かく調べることができます。
悪性リンパ腫の病期(ステージ)
I期 | がんはひとつのリンパ節領域のみにとどまっている。症状はほとんど出ない。 |
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II期 | 上半身または下半身の2つ以上のリンパ節領域に浸潤している状態。 |
III期 | 上半身または下半身の2つ以上のリンパ節領域がおかされている状態。 |
IV期 | 臓器や骨髄、血液中にがんが転移している状態。 |
悪性リンパ腫の治療法
ホジキンリンパ腫
Ⅰ期・Ⅱ期
放射線治療が中心。
Ⅲ期・Ⅳ期
抗がん剤治療か、放射線治療との併用。また造血幹細胞移植と共に大量抗がん剤治療も。
非ホジキンリンパ腫
悪性度が低く、がんが一つのリンパ節にとどまっている場合は、放射線照射が中心。悪性になると、抗がん剤の多剤併用療法が中心。大きながんの場合には、放射線治療を併用。また、造血幹細胞移植と共に大量抗がん剤治療も。