原因や特徴・初期症状について

喉頭がんの基本情報

喉頭がんとは

発声に不可欠な器官である喉頭部分に生じるがんです。喉頭は、咽頭と気管の間の喉仏(のどぼとけ)のあたりに存在します。甲状軟骨、輪状軟骨などの軟骨に囲まれ、内側には声帯という2枚(1対)の膜からなる組織があり、この膜の間(声門)に空気を送り声帯を振動させることで声をつくります。

また、食物を飲み込む際には、喉頭の上部にある喉頭蓋が後ろに倒れ込むことで声門を閉鎖し、気管に食物が入らないようにする役割をします。喉頭がんは、そのほとんどが扁平上皮がん(粘膜の表面を覆っているうろこ状の組織にできるがん)で、発生場所により「声門がん」「声門上がん」「声門下がん」に分かれます。

喉頭がんの原因はまだ十分に解明されていませんが、最も関係しているのは喫煙とされ、患者の95%以上が喫煙者といわれます。その他の危険因子としては、過剰なアルコール摂取、大気汚染、のどの酷使、口腔内の不衛生、遺伝などが指摘されています。

喉頭がんの発症数は、がん全体でみると2%前後とあまり多くはありませんが、首から上の頭頚部の中では最も発症数が多く、25~30%とみられています。

喉頭がんの分類

1.声門がん

声帯に発生するがんで、喉頭がん全体の60~70%を占めます。声門にはリンパ網が極めて少ないため、首のリンパ節に転移することは少なく、喉頭に限局している場合がほとんどです。その為、Ⅲ期以降の進行がんになるのは10%程度で、喉頭がんの中では治療成績がよいとされます。

2.声門上がん

声門より上に発生するがんで、喉頭がん全体の30~35%を占めます。初期症状はほとんど現れず、首のリンパ節に転移しやすいため、発見されたときは多くがⅢ期以降の進行がんとなっています。首のリンパ節が腫れたために病院を訪れた際にがんが発見されるケースが大半です。

3.声門下がん

胆管と水管が合流して十二指腸に流れこむ部分であるファーター乳頭部付近に生じるがんです。早期から黄疸が現れるので、胆道がんの中では比較的早期発見されやすいといわれます。また、リンパ節への転移も少ないため、他の胆道がんと比較すると治療成績は良いといわれます。

喉頭がんの原因

喉頭がんの発症にもっとも関係しているのは喫煙とされています。喉頭がん患者の95%以上は喫煙者で、喫煙者は非喫煙者の30倍も喉頭がんにかかりやすいとみられています。

今まで吸った総喫煙量の目安として、1日に吸うたばこの平均本数に喫煙年数をかけて計算する「ブリンクマン指数」がよく用いられますが、この値が、1000~1200を超えると喉頭がんの危険が極めて高くなるとされています。

喫煙以外の原因としては、過剰なアルコール摂取、大気汚染、のどの酷使、口腔内の不衛生、遺伝などが指摘されています。また、喉頭の扁平上皮細胞がヒトパピローマウイルスに感染し、そこにタバコなどの刺激が加わることでがん化が始まるという実験データも報告されていますが。

これについては、まだはっきりしていません。喉頭がんの発症のピークは60歳代後半で、男性に著しく多いがんです。

喉頭がんの症状

発症部位によって現れる症状が異なります。

1.声門がん

声帯にがんが生じるので、声を出すときの振動に影響を与えます。つまり、声が出しにくくなり、声がかすれてきます(嗄声)。自覚症状が早くから現れるので、比較的早期に発見されます。雑音の入ったような硬い感じの嗄声が1カ月以上続いたら喉頭がんを疑います。

がんが進行すると、更に声門が狭くなり、声のかすれがますますひどくなります。咽頭が痛い、喘鳴(呼吸によりゼーゼーと音がする)、呼吸困難、血痰などの症状が現れます。

2.声門上がん

初期症状は、ほとんどありません。Ⅱ期~Ⅲ期になると、喉にいがらっぽさなどの違和感、嚥下痛(飲み込むときの痛み)、耳に拡がる痛みなどが現れます。がんが声門まで広がると、声門がんと同様に、嗄声や喘鳴、呼吸困難などが起こります。

3.声門下がん

進行するまで症状が出ないことが多く、がんが声門まで広がってはじめて嗄声などの症状が現れます。症状が進行すると口臭が生じます。

喉頭がんの診断

一般に、まず視診で病巣を直接見て判断します。さらに、病変の一部を取り出しがんかどうか調べる生検を行います。喉頭がんが発見されれば、X線、CT、MRIでがんの進行状態を調べます。

1.視診

口の中に間接喉頭鏡という小さな鏡や内視鏡を入れて、喉頭に異常がないかを直接見て調べます。鼻から細いファイバースコープを入れて調べることもあります。

2.喉頭ストロボスコピー検査

声帯の動きをスローモーションで観察して、嗄声などの原因となっている振動の異常を調べる検査方法です。

3.生検

病変の一部を採取し顕微鏡下で観察することで、がんかどうかを判断します。病変の採取は、一般的に、のどへの局所麻酔で行いますが、全身麻酔が必要な場合もあります。

4.画像診断

喉頭がんが発見された場合、X線、MRI(核磁気共鳴撮像法)、CT(コンピューター断層撮像法)による画像診断でがんの進行状態を確認します。

喉頭がんの病期(ステージ)

声門がん

I期aがんが声帯の一方に限局している。
I期bがんが両方の声帯に浸潤しているが、声帯内にとどまっている。
II期がんが声門上または声門下に浸潤している。
III期声帯に動きがなく固定され、喉頭内にがんが広がっている。頸部リンパ節に3センチ以下の転移が1個ある。
IVa期咽頭、食道、甲状腺、頸部など、がんが喉頭以外にも広がっている。頸部リンパ節に2個以上転移しているか、または、3センチ以上の転移がある。
IVb期腫瘍が遠隔転移している。

胆管がん

I期がんが声門上部の一部分に限局している。
II期がんが声門上部の他の部位に浸潤している。
III期声帯に動きがなく固定され、喉頭内にがんが広がっている。頸部リンパ節に3センチ以下の転移が1個ある。
IV期a咽頭、食道、甲状腺、頸部など、がんが喉頭以外にも広がっている。頸部リンパ節に2個以上転移しているか、または、3センチ以上の転移がある。
IV期b腫瘍が遠隔転移している。

声門下がん

I期がんが声門下部に限局している。
II期声帯に動きがなく固定され、喉頭内にがんが広がっている。頸部リンパ節に3センチ以下の転移が1個ある。
III期声帯に動きがなく固定され、喉頭内にがんが広がっている。頸部リンパ節に3センチ以下の転移が1個ある。
IV期a咽頭、食道、甲状腺、頸部など、がんが喉頭以外にも広がっている。頸部リンパ節に2個以上転移しているか、または、3センチ以上の転移がある。
IV期b腫瘍が遠隔転移している。

喉頭がんの治療法

声門がん、声門上がん


Ⅰ期Ⅱ期

放射線治療が中心。がんの場所により喉頭の部分切除を行う。がんが限局している場合はレーザー切除手術を行う場合もある。


Ⅲ期

第一選択として喉頭全摘出手術。放射線治療後、再発した場合に喉頭全摘出手術を行うこともある。リンパ節への転移がある場合は、頸部郭清術を行う。化学療法を行うこともある。


Ⅳ期

Ⅲ期と同様の治療を行うか、対症療法や緩和療法を行う。

声門下がん

Ⅰ期・Ⅱ期

放射線治療を行う。喉頭の部分切除。がんの部位によっては喉頭全摘出を行う場合もある。


Ⅲ期

喉頭全摘出と甲状腺の切除、気管食道リンパ節の郭清を行う。術後、放射線治療。化学療法を行うこともある。


Ⅳ期

Ⅲ期と同様の治療を行うか、対症療法や緩和療法を行う。


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監修:孫 苓献(広州中医薬大学中医学(漢方医学)博士・アメリカ自然医学会(ANMA)自然医学医師・台湾大学萬華医院統合医療センター顧問医師)