原因や特徴・初期症状について
大腸がんの基本情報
大腸がんとは
食道から始まる消化管のうち、もっとも末端に位置するのが大腸です。大腸は「結腸」と「直腸」からなるので、大腸がんを区別するときは発生部位におうじて「結腸がん」または「直腸がん」と呼びます。
胃の中で胃液と混じった食べものは、小腸で半流動体の混合物となり、大便へと変化しつつ結腸にたどり着きます。この老廃物は大便として体外に放出されるまで大腸に保管されます。この大便の一時保管所である大腸に出来るがんが大腸がんです。
大腸がんの最近の生存率は他のがんに比べて比較的高く5年生存率は平均60~70%です。がんが腸壁に留まっている早期のがんの場合は90%にまで達します。結腸がんと直腸がんの生存率に大きな差はありません。
大腸がんは、ファイバースコープ技術の普及が進み、どの施設でも容易に検査が出来るようになったので、早期がんで発見されることが多くなりました。
大腸がんの分類
大腸がんには、大きく分けて腺がんと表在性がんの2種類があります。
腺がん
大腸がんの中で一番多いのは粘膜層の腸線に発生する腺がんで、大腸がん全体の90~95%を占めます。これは、大腸の内側にできるポリープの一部ががん化し、腸壁の内部まで浸潤していくものです。
1型(腫瘤型)
病巣がはっきりと盛り上がっていることが確認でき、周囲との境界が明らか。
表在性のがん
粘膜表面に沿ってがん病巣が広がるがん。腸壁内部に広がったり飛び出したりしないため、通常のX線撮影では発見することが難しく、進行するまで気づかないことが少なくありませんでした。しかし近年の検査技術の向上により発見率が高まってきています。
大腸がんの原因
1.遺伝性による大腸がん
遺伝性と考えられる代表的な大腸がんに「家族性大腸腺腫症」があります。この病気の遺伝子をもつ家系のひとは、大腸内に100個以上のポリープが発生しやすくなります。この遺伝性のがんは通常の大腸がんより若い人々(20代~40代)が発症します。
2.遺伝性以外の大腸がん
アルコール摂取と大腸がんの発症には統計的な因果関係があります。日本人約12万5,000人を対象に17年間にわたって飲酒の習慣と大腸がん発症との相関を分析したデータによると、飲酒をしない人の大腸がん発症率に比べて、日本酒を飲む人の発症率は4倍、焼酎で約6倍、ビールでは約12倍以上という数値が出ています。
飲酒と同様に、タバコも大腸がんの原因の一つです。アメリカのハーバード大学の調査では、タバコと大腸がんの関連性に有意な相関関係があることを発表しています。このほか、動物の肉や牛乳などのような飽和脂肪に富む食事が多い人や、繊維質をあまり摂らない人にも明らかに大腸がんの多発傾向がみられます。
大腸がんの症状
1.下血
大腸がんは消化管の末端にある器官のため、異常が生じるとすぐに便の状態に反映されます。病巣が潰瘍化して出血していると、便の表面に鮮血が付着したり、時には血の塊が排出されることもあります。
2.排便障害
大腸の末端近くに発生するがんは、腸にリングをはめたような形になることがあります。この状態でがんが成長すると、腸が締め付けられて排便がうまく出来なくなる場合があります。
さらに症状が進行すると、大腸がほぼ閉鎖され、嘔吐や下痢を引き起こします。原因不明の便秘や下痢の状態が周期的に繰り返される場合は注意が必要です。
3.貧血
盲腸に近い部位に潰瘍が生じてがん化した場合などには、その部位が出血をし続けて貧血症状を起こす場合があります。
この症状がある時には便が黒くなります。明らかな自覚症状がないまま大腸がんが進行すると、肺や肝臓などの部位にがんが転移してはじめて、大腸がんが発見される場合もあります。
大腸がんの診断
1.便鮮血検査
スクリーニング検査として、便の中に混じっているヒトヘモグロビンを試験薬を使って判別する便鮮血検査が行われます。出血が間欠的である場合は、必ずしもこの方法でがんを発見することができるとはかぎらず、また大腸がんの20~30%は便鮮血検査では陰性になります。
反対に良性腫瘍でも20~30%が陽性を示します。がんを発見する確実な方法とは言えませんが、特別な準備もなく安価にスクリーニングを行う方法としては有効性が認められています。
2.注腸造影検査
下剤や洗浄剤を2リットルほど飲み大腸内を完全に空にし、肛門から造影剤(バリウム)と空気を注入(注腸)してX線撮影をします。この時、大腸をさまざまな角度から撮影するため、被験者は体の向きをいろいろな方向にむけて検査します。
3.内視鏡検査
あらかじめ下剤と洗浄剤で大腸内を完全に空にします。そして肛門から柔らかい内視鏡を挿入します。この内視鏡検査では、非常に小さな大腸内の腫瘍まで発見でき、さらに組織サンプルを採取して顕微鏡で詳しく調べることもできます。
胃がんの病期(ステージ)
0期 | がんが表面の粘膜にとどまっている。 |
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I期 | がんが大腸壁内にとどまっている。 |
II期 | がんは大腸壁を超えて浸潤しているが、リンパ節には及んでいない。 |
III期 | がんは隣接する臓器やリンパ節へ転移している。 |
IV期 | がんは遠隔転移している。 |
大腸がんの治療法
結腸がん
0期・Ⅰ期
内視鏡手術(EMR)か腹腔鏡手術、もしくは局所切除
Ⅱ期
開腹手術による外科的切除、もしくは腹腔鏡手術。補助的に抗がん剤治療も。
Ⅲ期
リンパ節と結腸を切除する手術。補助的に抗がん剤、放射線治療。臨床試験への参加も。
Ⅳ期
Ⅲ期の治療に同じ。さらに転移先の臓器の一部切除や放射線治療などの緩和ケアも。
直腸がん
0期
局所切除または内視鏡手術。
Ⅰ期
外科的切除。術後、抗がん剤治療も。
Ⅱ期・Ⅲ期
リンパ節を含めて大半の直腸を切除。機能温存手術も行う。術後、放射線や抗がん剤治療も。肛門周辺に病巣があれば、人口肛門を取り付ける。
Ⅳ期
Ⅲ期に同じ。さらに転移先の臓器の一部切除や放射線治療などの緩和ケアも。