原因や特徴・初期症状について
白血病の基本情報
白血病とは
血液中の細胞をつくる骨髄やリンパ節に異常が起こると、白血球の芽球(形態学的にもっとも幼若な血液細胞のこと)が「がん化」します。そのため、芽球が正常な白血球へと成熟する前に異常に増殖し、骨髄の内部をがん化した芽球が満たすようになります。
そしてその芽球は血液にも入ってきます。この状態になると、大量の異常な芽球によって血液が白っぽく見えることがあります。細胞の異常な分裂を繰り返す白血病は、がんという名はついていないものの、がんの一種、つまり血液のがんです。
日本での白血病は、がん全体の発症数の2~3パーセントで比較的珍しいがんの一つです。いったん白血病を発症すると、未成熟な白血球の芽球細胞が血液中に増え、赤血球や血小板の正常な増殖ができなくなります。 そのため血液は本来の役割を果たせなくなり、貧血や血液の止血機能障害によるさまざまな出血症状を引き起こします。
さらに体の免疫機能が崩壊するため、2次的な感染症にかかるリスクが非常に高くなります。かつては難病の代名詞であった白血病ですが、最近では抗がん剤治療や造血幹細胞の移植などの治癒しうる治療法が開発され、生存率の向上がみられています。
白血病の分類
白血病は、大きく「骨髄性白血病」と「リンパ性白血病」に分けられます。
1.骨髄性白血病
骨髄でつくられる「顆粒球」の芽球が未成熟なまま増殖します。日本では白血病全体の約55~65%を占め、特に中高年以降に多く発症します。急に症状が現れることが多く、早い段階での診断と速やかな治療が重要です。
2.リンパ性白血病
リンパ球の芽球が異常増殖して骨髄や血液にあふれる病気です。幼児期(0歳~7歳)の発症がとくに多く、それ以降、発症率は急激に低下します。症状としては、貧血症状、易感染性、出血傾向などが多いです。
白血病の原因
白血病の多くは、発症の原因が不明です。しかし、なかには近年になって、白血病を引き起こす遺伝子と発症までのメカニズムが部分的に解明されたものもあります。
白血病は基本的にすべて、血球細胞の分化・成熟機構に遺伝子のレベルで異常が起こって発症します。
1.急性骨髄性白血病の場合
急性骨髄性白血病(AML)の患者の数人に1人は、「AML1」もしくは「CBFβ(ベータ)」と呼ばれる遺伝子に異常があります。これらの遺伝子は通常、造血幹細胞が分化して白血球となるために必要な遺伝情報を読み出すのを助けるはたらきがあります。
しかし、これら2つの遺伝子「AML1」、「CBFβ(ベータ)」が同時にうまく作用しないと、遺伝情報が読み出されず、造血管細胞が白血球に成長することができなくなります。そしてその細胞ががん化する、すなわち白血病が発症するといわれています。
2.慢性骨髄性白血病の場合
慢性骨髄性白血病(CML)の患者の白血球には、「フィラデルフィア染色体」と呼ばれる異常な染色体が発見されています。この染色体には、9番染色体と22番染色体の末端が入れ替わるという特殊な”転座(てんざ)”がみられます。
この転座が起こると、それまで存在しなかった複合型遺伝子が新しく生まれます。この遺伝子がつくり出すたんぱく質には、造血管細胞が分化して正常な白血球となる過程を阻害するはたらきがあります。これが白血病発症の直接のきっかけとなるとされています。
白血病の症状
白血病を発症しても、体のどこかにがん病巣が生じるというわけではありません。また外見的に白血病だとわかるような特徴的な症状も出ません。
そのため、患者自身が初期の自覚症状によって医師の診断を受け、白血病と診断されることはほとんどありません。しかし以下のような症状が白血病が進行した場合に現れます。
1. 貧血症の諸症状
2.内出血が起こりやすい
3.顔面が蒼白になる
4.皮膚の下に点状の出血や青あざができる
5.小さなけがでも出血がなかなか止まらない
6.歯茎や鼻から出血し、ときには血尿や血便が出る
さらに症状が進行すると・・・
7.感染症にかかりやすくなる
8.ひどい寝汗をかく
9.脳出血を起こす
白血病の診断
白血病は多くの場合、健康診断などの血液検査の異常値が出て発見されます。しかし、診断の確定や、どのタイプの白血病かを判別するためには、さらに精密な検査が必要になります。代表的な二つの検査を紹介します。
1.骨髄穿刺(こつずいせんし)
局部麻酔をかけ、骨が皮膚に近い部分(胸骨や腸骨)に穿刺針と呼ばれる針を刺し、そこから少量の骨髄を抜き取ります。
そこに特定の血球細胞(またはその芽球)が異常に増殖しているか、そしてその遺伝子に異常があるかを調べます。
2.リンパ節生検
リンパ節が腫れている場合は、局部麻酔をして細胞を取り出し、異常な血球細胞の有無を調べます。リンパ節生検には、「針生検」、「直視下生検」、「センチネルリンパ節生検」の3つの方法があります。
白血病の病期(ステージ)
初発(未治療)時 | 全身に白血病細胞が増加し、感染症や発熱、出血傾向などの症状が現れる。 |
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(完全)寛解中 | 治療により末梢血液や骨髄中の白血球や血小板などの数が正常に戻る。白血病の症状もなくなり、白血病細胞は見た目には分からなくなる。 |
再発/治療抵抗性(不応性) | いったん寛解した後で病気が再発する、または治療実施にもかかわらず寛解状態にならない。 |
白血病の治療法
白血病は固形がんなどと違って外科手術ができず、抗がん剤治療が中心となりますが、強力な薬を使うと正常細胞まで殺してしまうので、新たな細胞を補充して造血能力を回復させる必要があります。
そこで、病期に合わせて、本人か他人の幹細胞(造血幹細胞)を移植する「造血幹細胞移植療法」が行われ、生存率が向上しました。
また、小児の場合は、ほとんど急性で大人以上に進行が速いため、直ちに治療に入りますが、全身の抗がん剤治療により相当に身体へのダメージをもたらし、小児特有のリスクも伴います。