再発と転移について

喉頭がんの再発と初期症状、再発・転移の予防と治療方法

喉頭がんの再発とは

喉頭がんは、声帯のある部分にできる「声門がん」、それより上にできる「声門上がん」、下にできる「声門下がん」の総称です。喉頭がん全体の60~65%を占めるのが声門がんで、30~35%が声門上がんです。なお、声門下がんを発症するケースはほとんどありません。

喉頭がんは他のがんと比較すると、初期段階での発見が容易です。早期治療が可能となるため、根治の期待が高いがんではありますが、それでも再発する場合があります。喉頭がんは、治療後、1~2年で再発するケースが最も多いようです。

喉頭がんの最初の治療の際に喉頭の全摘出手術を行った場合は、同じ場所に再発することはありませんが、転移して他の臓器に新たながんを作るケースがあるため、術後の定期的な検診を受けることがとても重要です。

喉頭がんの転移とは

声門上がんと声門下がんについては、組織内にリンパが豊富に通っているため、リンパ節転移を引き起こすケースが多いようです。声帯にはリンパがあまり通っていないため、声門がんがリンパ節転移するケースは少ないようです。なお、最初の治療の際に将来的なリンパ節への転移を見込んで、がん病巣と一緒に頸部のリンパ節を切除することもあるようです。

喉頭がんは進行すると、がんが浸潤してどんどん広がっていき、食道や甲状腺、咽頭などといった周囲の臓器や器官に転移をすることがあります。また、リンパ節に転移したがんが、やがて肝臓や肺、脳などといった臓器へ二次的な遠隔転移をすることもあります。

喉頭がんが再発したときの初期症状

喉頭がんは、初期段階で自覚症状が出やすく、早期発見、早期治療が可能です。喉頭がんが再発した際の初期症状は、がんの出来た部位によって異なります。

声門がんの初期症状

よく見られる症状としては、声の変化が挙げられます。ガラガラの声になったり、雑音が混ざったようなザラザラとした声質になったりすることがあります。また、発声時に息がもれるような感じになることもあります。風邪などを引いたわけでもないのに、このような症状が続く場合は、がんの再発を疑うべきでしょう。

声門上がんの初期症状

喉にいがらっぽさや異物感を感じることがあります。また、食事の際に食べ物を飲み込むと痛みを感じることもあります。頸部のリンパが腫れることもあります。

声門下がんの初期症状

声門下は気管に近いため、呼吸が苦しくなることがあります。なお、声門下がんは喉頭がんの中で最も初期症状が現れにくいと言われています。

これらの初期症状は必ず現れるものではありませんし、症状が出るようになった時には既にがんが進行してしまっている場合もあります。

喉頭がんの再発・転移予防

喉頭がんは手術による外科治療で根治が見込める場合でも、放射線治療が選択されるケースが多いようです。喉頭には発声にかかわる声帯があり、声を失うことになると患者のQOL(Quality of Life=生活の質)への影響が大きいため手術は敬遠されます。放射線治療だけでも予後は比較的良いのですが、がんの再発や転移を予防することを目的として、抗がん剤による化学療法を併用する場合があります。また、治療後にできる再発・転移の予防策としては以下のようなものがあります。

・煙草は吸わない
・アルコールは適量を守る
・大きな声を出すのを控える
・カラオケなどで喉を酷使した後は十分に休める
・口の中を清潔に保つ
・虫歯がある場合は治療をする
・蓄膿症に罹患している場合は治療をする
・熱い食べ物や飲み物を口にするのは避ける

また、術後の定期的な検診は欠かすことが出来ません。問診や頸部の触診、喉頭内視鏡やエコー、CT、MRIなどといった検査を医師の指示に従い受けることが大切です。

喉頭がんの再発・転移が見つかったときの治療法

喉頭がんは放射線治療が効果的であることと、声帯の切除は発声にかかわることから、最初の治療の際には放射線治療を選択するケースが多いようです。しかし、再発した場合は再び放射線治療を選択することは出来ませんし、抗がん剤による化学療法では再発した喉頭がんを治療するのは難しいとされています。そのため、基本的に手術でがん病巣を切除することになりますが、可能な限り喉頭を温存します。

がんがリンパ節に転移した場合は、耳後部から鎖骨までのリンパ節とその周辺組織を切除します。これに並行して放射線治療を行うこともあります。また、他の臓器に転移した場合は現病巣である喉頭がんの性質が引き継がれるため、喉頭がんの治療に用いられる抗がん剤による化学療法や、放射線治療を行います。

なお、喉頭の全摘出をすると声帯を同時に失うことになり、声を出すことが出来なくなります。そのため、声帯に代わる機能を持たせるためのトレーニングを行うことがあります。代表的なのが「食道発声」です。食道に空気を取り込み、食道の粘膜にあるヒダを振動させることで音声を発生する方法です。人口の器具を用いないため自分の肉声となります。

監修:孫 苓献(広州中医薬大学中医学(漢方医学)博士・アメリカ自然医学会(ANMA)自然医学医師・台湾大学萬華医院統合医療センター顧問医師)