再発と転移について
脳腫瘍の再発と初期症状、再発・転移の予防と治療方法
脳腫瘍の再発とは
脳腫瘍は頭蓋骨内に出来る腫瘍の総称で、良性腫瘍と悪性腫瘍とがあります。良性の脳腫瘍は手術で腫瘍を完全に切除することが出来れば、5年後生存率はほぼ100%です。しかし、わずかでも取り残しがあった場合は、再発の危険性がありますが、良性の腫瘍が再発するまでには10年以上の時間がかかるケースもあります。最初は良性の腫瘍であっても、再発の際に悪性に性質が変化するというケースもあるようです。
悪性腫瘍はほとんどの場合で「浸潤性発育」といって周辺の組織に浸潤して広がっていきます。そのため手術で完全に病巣を切除することは難しく、再発は避けられないと言われています。他の臓器のがんであれば、がん病巣だけでなく周辺の組織も一緒に切除をすることで、取り残しを防ぎますが、脳には重要な血管や神経が通っているため手術で傷つけてしまうと日常生活に支障をきたすことになります。そのため運動機能などに影響を及ぼさないぎりぎりの範囲でしか切除が出来ないのです。
脳腫瘍の転移とは
脳腫瘍には、脳組織から発生する「原発性脳腫瘍」と、他の臓器から転移してくる「転移性脳腫瘍」の二種類があります。脳腫瘍全体の内訳は、原発性脳腫瘍が85%、転移性脳腫瘍が15%となっています。原発性脳腫瘍が他の臓器や器官に転移することはほとんどありません。脳にはリンパがないため、進行してもがん細胞が他の臓器に回ることがないからです。
転移性脳腫瘍は、他の臓器を原病巣とするがんが進行して、リンパや血液に乗って全身を巡り、脳に遠隔転移したものです。脳に転移することが多いがんの種類としては、乳がん、肺がん、メラノーマ、結腸がんなどが挙げられます。転移性脳腫瘍は、脳だけでなく他の臓器にも転移があるケースがあり、治療を難しくします。また、脳を取り囲む脳脊髄液という液体内でがん細胞が増殖するケースがあり、これは治療をより困難にします。
脳腫瘍が再発したときの初期症状
脳腫瘍が再発した際の初期症状としては以下のようなものがあります。
・慢性的な頭痛
・原因不明の吐き気が続く
・視界の一部が欠ける
・視力が低下する
・片手や片足が動かしにくいと感じる
・片手や片足にしびれた感じがする
・言語障害
・耳鳴りや難聴の症状がある
脳腫瘍の症状には、腫瘍が大きくなり頭蓋の内圧が高くなることで現れる「頭蓋内圧亢進症状」と、腫瘍の発生した部分に応じて現れる「脳局所症状」があります。頭蓋内圧亢進症状としては、頭痛や吐き気などがあり、脳局所症状としては、手足のしびれや言語障害などといったものがあります。良性腫瘍の場合はこれらの症状はゆるやかに進行するのですが、悪性腫瘍の場合は急激に進行してしまいます。少しでも再発が疑われる症状が出た場合は、すぐに検査を受けることが大切です。
脳腫瘍の再発・転移予防
脳腫瘍の再発予防策として、最初の治療の際に手術を行った場合、放射線治療を並行して行うことがあります。がん組織の取り残しがあると再発リスクが高まるため、放射線で確実にがん細胞を死滅させるのです。
また、脳腫瘍の危険因子としては以下のようなものがあります。これらのものは可能な限り避けるようにするべきでしょう。
・高たんぱく・高脂肪の食事
・強いストレス
・喫煙
・放射線
・携帯電話の発する電波
ただし、これらの危険因子を遠ざけたからといって、脳腫瘍の再発予防に劇的な効果があるわけではありません。大切なのは最初の治療後、定期的に検査を受けて再発や転移の有無を確認することです。血液検査、CT検査、MRI検査、ラジオアイソトープ、ホルモン検査などを担当医の指示に従い受けるようにしましょう。
脳腫瘍の再発・転移が見つかったときの治療法
再発した脳腫瘍は可能な限り手術で切除しますが、困難なケースが少なくありません。そのため、放射線治療が中心となります。抗がん剤は脳まで届きにくいことから脳腫瘍の治療に抗がん剤を単独で使用することはありません。効果を高めるために数種類の抗がん剤を組み合わせて投与します。強い痛みなどの症状がみられる場合は並行して緩和治療を行い、苦痛を取り除きます。なお、腫瘍が他の臓器には無く、かつ頭蓋骨内にも1か所だけである場合は、手術による切除を行う場合もあります。
転移性脳腫瘍には基本的に放射線治療が行われます。腫瘍だけにピンポイントで放射線を照射する「定位放射線照射」と脳全体へ照射する「全脳照射」があります。腫瘍が1か所だけの場合は定位放射線照射を行います。制度を高めてターゲットだけに放射線を照射し腫瘍を縮小させます。定位放射線照射は正常な細胞の放射線への影響を極力減らすことが可能です。複数の腫瘍がある場合は全脳照射で脳内の全ての病変を縮小させるとともに、新たな病変の発生を防ぎます。