再発と転移について

卵巣がんの再発と初期症状、再発・転移の予防と治療方法

卵巣がんの再発とは

卵巣は骨盤内に存在していることから、卵巣がんはあまり症状が出ず早期発見が難しいと言われています。最初にがんと診断された時点で進行してしまっていることも珍しくありません。再発率も非常に高く、50%以上の確率でがんが再発すると言われています。再発は最初の治療から2年以内に発生するケースが多く、進行がんの2年以内の再発率は55%、5年以内の再発率は70%以上であるするデータもあります。

卵巣がんは再発についても自覚症状が乏しく、発見が遅れるケースが多いのが現状です。初回の治療で治癒した場合でも、常に再発を疑い定期的な検査を受けることが重要です。

卵巣がんの転移とは

卵巣がんは最初にがんが発見された時点で既にがん細胞が卵巣の被膜を突き破り、骨盤や腹膜内の広範囲に広がってしまっているケースが多々あります。卵巣がんはリンパ節に転移することも多いようで、傍大動脈リンパ節や頸部リンパ節へ転移することも少なくありません。また、がんが浸潤するとがん細胞が卵巣からこぼれてしまい、腹膜に広がって腹膜播種を引き起こすケースもあります。

がんが進行するとがん細胞が血液やリンパに乗って身体を巡り遠隔転移を引き起こすこともあります。卵巣がんが遠隔転移しやすい部位は腎臓や肺、骨、脳などです。遠隔転移が発見されるころになると、がんは進行してしまっているため完治は望めませんが、がんの進行を抑えながら症状が少しでも軽くなるよう、緩和療法などを交えながら治療を進めていきます。

卵巣がんが再発したときの初期症状

卵巣がんは「サイレントキラー」と呼ばれることからもわかるように、進行しても自覚症状が出にくいがんです。人によっては、遠隔転移をして初めてがんであることを知るというケースもあるようです。卵巣がんが再発したときの初期症状としては以下のようなものがあります。卵巣がんの再発率の高さを考慮するとこれらの症状が続いた際は、再発の可能性を疑い早急に検査を受けるべきでしょう。

・お腹の張りを感じる
・胃腸の不調が続く
・トイレの回数が多くなる
・体重が減少する

なお、転移した際の症状については転移先の臓器や器官によって異なります。肺に転移した場合は息切れを感じたり咳が続いたりします。骨転移は転移した骨の周辺に痛みを感じます。脳転移は頭痛や吐き気をもよおすことがあります。リンパ節への転移は周辺に圧迫されたような痛みを感じます。また、卵巣がんは肝臓へ転移することが多いのですが、肝臓も卵巣と同様にサイレントキラーと称される臓器であり自覚症状に乏しいのが特徴です。

卵巣がんの再発・転移予防

卵巣がんの再発予防には低用量ピルの服用が大変効果的です。低用量ピルは排卵を起こさないようにする薬剤であり、服用することで卵巣にかかる負担を軽減できるのです。特に、妊娠経験のない女性や、初潮が早かった女性は、そうでない人と比較して排卵の回数が多いため卵巣に負担がかかっており、低用量ピルの服用は大変有効であると言えます。低用量ピルの服用率が高い欧米では卵巣がんの発生率が低下しているといわれています。

また、がんの治療後に定期的に検査を受けることは大変重要なことです。問診や内診、超音波検査、腫瘍マーカー等の血液検査、必要に応じてCT検査やMRI検査を最初の1年は1ヶ月毎に、2年目は3ヶ月毎に、3年目は4ヶ月毎に、4~5年は半年毎に、それ以降は1年に1回を目安に受診すると良いでしょう。卵巣がんは再発の多いがんではありますが、検査で発見しやすく、こまめに検診を受けていれば再発や転移を早期に発見できる可能性が高いのです。

卵巣がんの再発・転移が見つかったときの治療法

卵巣がんの最初の治療で放射線治療を実施した場合、再発に際しては基本的に手術を行います。転移が明確でない場合でも、卵巣だけでなく子宮や大網という脂肪組織を切除します。リンパ節への転移が認められる場合は、これに加えて後腹膜リンパ節の一部、または全部を切除します。さらに小腸や大腸といった臓器に転移や浸潤をしている場合は、これらの臓器も切除します。なお、初回の治療で抗がん剤を使用し、かつその結果が良好であった場合はがんの再発に際しても、同様の抗がん剤を用いることがあります。

転移した卵巣がんの治療は基本的に放射線治療が選択されます。転移したがんが1か所だけにとどまっているケースでは状況によっては手術にて切除をしたり、ラジオ波による焼灼療法を実施したりすることもあります。がんが広範囲に広がっている場合や、転移病巣が多い場合は抗がん剤による化学療法が行われます。

卵巣がんが肝臓に転移した場合は、肝動脈という肝臓に栄養や酸素を送る血管をふさぐことで肝臓内のがん細胞を死滅させる「肝動脈塞栓術」という治療を行うこともあります。また、骨転移は痛みを伴うケースも多々あるため痛みを取り除く緩和ケアを行うこともあります。

監修:孫 苓献(広州中医薬大学中医学(漢方医学)博士・アメリカ自然医学会(ANMA)自然医学医師・台湾大学萬華医院統合医療センター顧問医師)