再発と転移について
膀胱がんの再発と初期症状、再発・転移の予防と治療方法
膀胱がんの再発とは
膀胱がんは比較的、早期発見が容易ながんであり、悪性度が低い場合も多く予後が良いとされていますが、それでも再発を起こすケースが多々あります。膀胱がんは、がんが上皮内または粘膜内とどまっている「表在性膀胱がん」と、がんが粘膜の下または筋層にまで浸潤している「浸潤性膀胱がん」の二つに大別されます。表在性膀胱がんは内視鏡手術によって切除が可能ですが、細かいがん細胞が取り切れず膀胱内に残り再発してしまうことがあります。表在性膀胱がんの顕著な特徴として再発を何度も繰り返すという点があります。
表在性膀胱がんの再発以外にも、手術によって膀胱を摘出したにもかかわらず、膀胱のあった場所にがんが発生する「局所再発」や、腎盂や尿管などにがんが発生する「上部尿路再発」などがあります。
膀胱がんの転移とは
膀胱がんは他のがんと比較すると転移を起こしにくいがんであると言われています。それは、膀胱を覆う「筋膜」という組織が関係しています。膀胱内でがん組織ができても、厚い筋膜を破って外に出るまでには長い時間を要します。そのため多くの場合、転移を起こすよりも先に膀胱がんが発見されて、治療をすることが出来るのです。
しかし、膀胱がんが出来ていることに気付かず、長い期間治療をせずに放置してしまうと、がんが徐々に浸潤していき、やがて筋膜を突き破り周辺の臓器に広がっていきます。さらにがん細胞がリンパや血液に乗って身体中を回り遠隔転移するケースもあります。この段階で膀胱がんが発見されても、がんが進行しているため治療が困難になってしまいます。膀胱がんの主な転移先としては肝臓や骨、肺などがあります。骨や肺に転移しているケースでは、がんは末期であることが多いようです。
膀胱がんが再発したときの初期症状
膀胱がんが再発した際の初期症状としては以下のようなものがあります。膀胱がんは他のがんと比較すると比較的早期に症状が出ると言われています。
・血尿が出る
・排尿時に痛みを感じる
・トイレに行く回数が増える
・背中に痛みやむくみがある
・下腹部に痛みがある
これらの症状が現れた場合はすぐに医療機関を受診して検査を受けることが大切です。この中でも血尿は最も頻繁に現れる症状です。膀胱がんの症状として起こる血尿は痛みを伴わないのが特徴です。全血尿よりも、排尿の最後に血が混ざる終末時血尿の場合が多く、血の塊が出ることもあります。また、血尿は必ずしも目に見えるわけではなく、顕微鏡による検査ではじめて確認できるケースもあります。
膀胱がんの再発・転移予防
膀胱がんの再発・転移の予防として大切なのは、水分を多く摂取することです。多量の水分を体内に取り込むことで、尿に含まれる毒性物質が希釈されるとともに、早期に膀胱内から排出することが出来るからです。また,緑黄色野菜や果物の摂取も再発・転移の予防に有効であると言われています。
その他、タバコは控えて、アルコールの摂取は適量を守ることが大切です。また、定期的に運動をして身体を動かし、栄養豊富な食事を摂ることも大切です。
また、がんの治療後に定期検診を受けることも忘れてはいけません。膀胱がんの場合は、最初の1年は内視鏡検査と尿細胞検査を3ヶ月毎に実施します。再発の兆候が見られてなければ、その後2~5年は半年ごとに、5年~10年は1年ごとに実施します。膀胱がんは他のがんと比較して非常に進行が遅いため、長期に渡って経過を観察する必要があるのです。
膀胱がんの再発・転移が見つかったときの治療法
膀胱がんが再発した場合でも、表在性膀胱がんであれば内視鏡手術での切除が可能です。しかし、再発を繰り返すことで浸潤性膀胱がんへと変質してしまうケースがあるため、再発の防止に抗がん剤を膀胱内に注入する治療が行われることがあります。
なお、再発したがんが浸潤性膀胱がんであり粘膜の下まで浸潤しているケースでは基本的に膀胱を摘出することになります。さらに、がんが筋層にまで浸潤している場合は、膀胱の摘出だけでなく骨盤内リンパ節郭清を行うことになります。
さらに女性の場合は、状況によって尿道や子宮、膣の一部を摘出します。男性の場合は、前立腺や精巣、骨盤内のリンパ節を切除することがあります。腎臓で作られた尿は膀胱で蓄えられ、尿道を通って体外に排出されます。膀胱や尿道の摘出にあたっては、これに代わる別の尿路を再建する必要があり「尿路変向術」という手術を別途行います。
膀胱がんは主に肺や肝臓、骨、リンパ節などに転移をします。膀胱がんが他の臓器に転移している場合は、手術によってがん病巣を取り除くことは基本的にありません。この段階ではすでにがん細胞が全身に回っていることが予想されるからです。複数の抗がん剤を組み合わせて投与する多剤併用化学療法を実施します。また、骨への転移は激しい痛みを伴うことが多く、緩和ケアによって症状を軽減させることもあります。