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呼吸法

呼吸方で免疫力を高める

人の身体はがんに侵されると著しく免疫力が低下します。それは、身体の中で増殖したがん細胞が自身を守るために、人体の免疫機能を抑制するからです。そのため、がん治療において免疫力を高めることは極めて重要なことなのです。

免疫力を高めるための方法は多々ありますが近年、呼吸法によって免疫力を高めることが出来るということがわかってきました。誰でも気軽に取り組むことが出来るだけでなく、身体に負担をかけることなく免疫力を高めることが出来る優れた方法として医療の現場で注目されています。

なぜ呼吸法で免疫力が高まるのか?

呼吸は簡単に言うと体内に酸素を取り込み、体外に二酸化炭素を排出することを意味し、これをガス交換といいます。このガス交換には二種類があります。

肺での酸素と二酸化炭素との交換を外呼吸、毛細血管を通じた細胞内の酸素と二酸化炭素との交換を内呼吸といいます。この二種類のガス交換が常時行われることで、私たちの身体は健康な状態が保たれているのです。

呼吸には「吸う」と「吐く」とがありますが、息を吐くときに副交感神経が優位になります。副交感神経とは、自律神経の一つで人間の免疫機能を調整する働きがあります。つまり呼吸と身体の免疫力には密接な関係があるのです。

免疫力の上がる呼吸法 ~腹式呼吸~

免疫力を高める呼吸法の一つとして、腹式呼吸が挙げられます。腹式呼吸は横隔膜の動きを意識する呼吸法です。腹式呼吸のポイントは息を吐き切ってから吸い込むことです。

ゆっくりとお腹をへこませながら口から息を吐き、次にお腹を出しながら鼻からゆっくりと息を吸い込みます。息を吸うとき、へその下の部分を大きく膨らませることをイメージすることが大切です。

腹式呼吸をすることで腹部のリンパの流れが良くなります。すると、血液中に含まれる免疫細胞が効率よく体内を巡るため免疫力が高まるのです。

さらに、腹式呼吸をすることで脳内のセロトニンが増加します。セロトニンは神経伝達物質の一つで、自律神経の働きを調節する機能があります。自律神経を整えることで、免疫機能を調整する副交感神経の働きが活性化し、免疫力を高めることが出来るのです。

免疫力の上がる呼吸法 ~深呼吸~

ゆっくりと深呼吸をすることでも免疫力を高めることが出来ます。酸素が体内に取り込まれると、それが信号として自律神経に伝わり、副交感神経が優位になるのです。

また深呼吸をすることで横隔膜が内臓を刺激し、臓の働きが活発になります。すると血流が良くなり冷え性などの改善に役立ちます。身体が冷えると免疫機能を司るリンパ球の働きが抑制されますので、身体を温めることはとても大切なことです。

また、深呼吸にはリラックス効果があることも見逃せません。心が落ち着いたときにも副交感神経の働きは活発になるからです。

深呼吸のやり方は簡単です。リラックスした状態で、口笛を吹くときのように口をすぼめて、お腹をへこましながらゆっくりと息を吐きます。そのとき、息を完全に吐き切ることが大切です。

息を吐き切ったら胸を開くことを意識して、大きく空気を吸い込みます。これを数回繰り返すだけで十分効果があります。起床時や食後など、一日数回深呼吸をする習慣を身につけると良いでしょう。

免疫力の上がる呼吸法 ~鼻呼吸~

鼻呼吸も免疫力の上がる呼吸法の一つです。現代人は無意識のうちに口呼吸をしている人が多く、その傾向は特に若年層に多くみられます。人間は本来、鼻呼吸をする生き物であり、口呼吸には様々な弊害があると言われています。

呼吸は生命の維持に必要不可欠なものですが、空気中にはウイルスや細菌などの人体に有害が数多く存在します。それらが体内に取り込まれるのを鼻の中の粘膜や毛が防いでくれるのです。

ところが、口にはそのような機能がないため、日常的に口呼吸をしているとウイルスや細菌などが体内に侵入してしまい風邪などの原因となってしまうのです。

また、冬などの外気が冷たい時などは、鼻呼吸をすることで吸い込んだ空気が肺に入る前に温められるのですが、口呼吸の場合は冷たいまま取り込まれてしまいます。

そのため身体が冷えやすく、免疫力の低下を招いてしまいます。また冷たい空気は喉を傷める原因となります。喉の粘膜には病原体などを殺菌する働きがあるのですが、痛めてしまうとその機能は低下してしまいます。

これらの点から、日常的に口呼吸をしている人は、意識して鼻呼吸に変えるようにすべきでしょう。

このように少し呼吸法を意識するだけで簡単に免疫機能を向上させることが出来ます。日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

監修:孫 苓献

広州中医薬大学中医学(漢方医学)博士・アメリカ自然医学会(ANMA)自然医学医師・台湾大学萬華医院統合医療センター顧問医師