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高齢者のがん罹患率と進行速度

高齢者のがん罹患率

一般にがんは高齢者に多い病気とされていますが、実際はどうなのでしょうか?最新のデータを確認するとやはりその傾向が見て取れます。男女別・年齢別の10万人あたりのがんの罹患者数の推計値は以下の通りです。

出典:国立がん研究センターがん対策情報センター

このように年齢の増加に伴い右肩上がりで罹患率が上昇しています。がんは高齢者に多い病気であると言うことが出来るでしょう。

なぜがん患者には高齢者が多いのか ~遺伝子のミスコピー~

人間の身体は約60兆個の細胞によって出来ています。細胞は大変弱いもので日々1%程度が死滅してしまうため、減った分は細胞分裂をすることで数を補います。細胞分裂はDNAと呼ばれる細胞の設計図をコピーして行われるのですが、わずかな割合でミスコピーが生じてしまいます。ミスコピーによって生まれた細胞は生きてはいけず、すぐに死んでしまうのですが、突然変異を起こし死なずに細胞分裂を繰り返すがん細胞となってしまうものもあるのです

タバコや放射線、化学物質などの影響で長い時間をかけて少しずつDNAは破損していきます。すると細胞分裂の際にミスコピーが起こりやすくなってしまうのです。つまり高齢者ほど細胞のミスコピーが起こりやすく、がん細胞化しやすいというわけです。

高齢者のがんの進行は遅いのか

一般に高齢者のがんの進行は緩やかであるといわれていますが、実際はどうなのでしょうか?がんが細胞分裂を繰り返し大きくなるという点から、若年者の方が細胞分裂は活発であるため高齢者よりも早くがんが進行するという認識を持っている人が多いようです。しかし、結論から言いますと、がんを発症する年齢によって、病気の進行が早くなったり、遅くなったりすることはありません。がんが発症するメカニズムは細胞の遺伝子異常に起因します。そのため、がんの進行に個人差が出るのは当然ですが、年齢が直接影響することはないのです。

高齢者に多いがんは進行が遅い

なぜ高齢者はがんの進行が早いという誤った認識が広まったのでしょうか?それはがんの種類によって進行が早いものと遅いものとがあり、高齢者と若年者とでは、かかりやすいがんの種類が異なる点にあると言われています。

進行が遅いとされるがんには、「前立腺がん」「胃がん」「大腸がん」「乳がん」などがあります。このなかで、乳がん以外は高齢者に多いがんだということが知られています。また、スキルス性胃がんは若年者に罹患が多いとされていますが、このがんは進行がとても早いとされています。

つまり、高齢者がかかりやすいがんには、進行が遅いとされるものが多く、若年者に多いがんに進行が早いものがあるということです。こういったことが、若年者は進行が早く、高齢者はがんの進行が遅いというイメージを抱かせている理由の一つであると推察されていいます。

がんの進行速度について

生まれたばかりのがん細胞の大きさは10ミクロン(0.01ミリ) という極めて小さなものですが、長い時間をかけて細胞分裂を繰り返し大きくなっていきます。がんは大きさが1センチ程度になると検査で発見され、がんと診断されるようになります。がん細胞が生まれてから1センチ程度の大きさに成長するまでには、10~15年という非常に長い時間を要すると言われています。がんが1センチ程度の大きさの時に発見できれば、早期発見となり、根治出来る可能性も高くなります。しかし、がんという病気の恐ろしいところは、がんが大きくなるほどに成長のスピードが速くなるという点にあります。定期的に検診を受け、早期発見・早期治療を目指すことが何よりも大切です。

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監修:孫 苓献

広州中医薬大学中医学(漢方医学)博士・アメリカ自然医学会(ANMA)自然医学医師・台湾大学萬華医院統合医療センター顧問医師