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笑うこと

笑うことで免疫があがる?

がん治療において免疫力を高めるということは大変重要なことです。健康な人の身体は免疫細胞の働きによりウイルスに感染した細胞や病原体の増殖が抑えられています。

ところが身体ががんに侵されると、この免疫機能が損なわれ、がん細胞の増殖を抑えることが困難になっていきます。また、風邪などの病気にもかかりやすくなり、場合によってはがんの治療に深刻な影響をもたらすこともあるのです。

免疫力を高める方法としては、生活習慣や食習慣の改善や薬物の投与などがありますが、誰でも簡単に出来るものとして「笑う」という方法が挙げられます。笑うことで免疫力が高まるなんて、にわかに信じられないという人もいるかもしれませんが、このことは近年の研究の結果によって明らかとなっているのです。

笑いによる免疫力アップは身体への負担もなく誰でも手軽に出来る方法として注目が集まっています。いま医療の現場では笑うことで免疫力を高め、がんや病気の治療・予防に役立てようという動きが広がっています。

がん細胞を攻撃するNK細胞とは?

がんの原因となるがん細胞は健康な人の身体でも日々作られているということをご存知でしょうか?その数は一日に3,000~5,000個とも言われています。

これだけを聞くと恐怖を感じる人もいるかもしれませんが、健康な人の身体にはNK細胞(ナチュラルキラー細胞)という免疫細胞が存在していて、日々生み出されているがん細胞を攻撃・破壊して、がんの発症を抑えているのです。

NK細胞はリンパ球の一種です。リンパ球とは人間の免疫機能を司る血液細胞で、病原菌などの外敵から私たちの身体を守っています。NK細胞の主な働きは癌細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃し破壊することです。私たちの身体には50億ものNK細胞が存在するといわれています。

NK細胞の働きが活発であるほど人は免疫機能が高い状態にあるといえるのです。逆にNK細胞の働きが弱くなると免疫力が下がり、がん細胞と戦う力も弱まってしまうのです。このNK細胞、近年の様々な研究により、笑うことで働きが活性するということがわかってきました。

なぜ笑うことで免疫が上がるのか?

私たちが笑うと大脳皮質の前頭葉に興奮が起こり、それが免疫機能を司る間脳に刺激として伝達されます。間脳は自立神経の中枢であり、免疫機能を抑制する働きもしています。

刺激を受けた間脳からは神経ペプチドというホルモンが分泌され、血液を通じてNK細胞と出会います。神経ペプチドがNK細胞の表面に付着することで、NK細胞の働きが活性されるのです。

神経ペプチドの力によって活性したNK細胞は、がんの発症しやすい肝臓や腎臓、胃などの臓器に対して積極的に働くと言われています。笑いによってNK細胞を活性させることがいかに重要であるかがうかがえる事実ではないでしようか?

間脳から分泌される神経ペプチドには面白い性質があります。生み出されるきっかけとなった刺激の性質によって、善玉と悪玉の二種に分かれるのです。楽しい笑いによって受けた刺激から分泌されるのは善玉のペプチドで、NK細胞を活性させます。

逆に悲しい感情やストレスなどの刺激によって分泌された神経ペプチドは悪玉ペプチドとなってNK細胞の働きを抑制してしまうのです。改めて、笑うということはとても大切なことだと言うことが出来るでしょう。

なお、過去に行われた実験結果として、19人を対象に約3時間漫才などを見て笑った後に血液検査をしたところ、直前の検査でNK細胞活性の数値が低かった人は全員、正常な数値に上昇したというデータがあるようです。

日常的に笑いを心がけることの重要性

NK細胞を活性し免疫力を高めるためには、日常的に笑いを心がけることが大切です。テレビのお笑い番組や漫才などを見たり、家族や友達とたわいのないおしゃべりで笑ったりするのはとても効果的だと言えるでしょう。

常にお笑い番組を見たり、人と笑い話をしたりするのは難しいという人も多いでしょうけれど、心配いりません。本当に面白いと思って笑っていなくてもNK細胞は活性するということが研究によって明らかになっています。

つまり、作り笑いであったとしても、表情を笑顔にすることでNK細胞は十分活性させられるのです。意識的に笑顔を作ることで表情筋が働き、それが楽しくて笑っているときと同じ刺激として脳に伝わるのです。

これは脳が騙されている状態なのですが、それでも神経ペプチドが分泌されNK細胞は活性します。ですから、日頃からにこやかな笑顔でいることを心がけましょう。きっと誰でも無理なく長く続けられるはずです。

悲しくネガティブな感情はNK細胞の活性を抑制してしまいます。些細なことでクヨクヨしたり落ち込んだりせず、明るく笑い飛ばすことが大切です。

また、NK細胞の活性は加齢とともに減少していくと言われています。年齢を重ねた人ほど、日々の生活の中に笑いの要素を取り入れていくことが重要だと言えるでしょう。

監修:孫 苓献

広州中医薬大学中医学(漢方医学)博士・アメリカ自然医学会(ANMA)自然医学医師・台湾大学萬華医院統合医療センター顧問医師