食生活と密接な関係にある免疫力
がん治療において免疫力を高めることは重要な課題だと言えます。免疫機能が正常な状態になければ、がん細胞の増殖を抑えることが出来ず、感染症などにかかりやすい状態になってしまいます。がんの治療に必要な体力も、免疫力の低下とともに落ちてしまうからです。
免疫力を高めるための有効な方法として、食生活の改善が挙げられます。なぜなら、私たちの身体は食べたもので出来ているからです。人体は細胞で形成されていていますが、その細胞は日々の食事で作られるのです。栄養が不足したり、偏ってしまったりすると免疫力が下がり、風邪などにかかりかかりやすくなってしまいます。
当然、がん治療にも深刻な影響を及ぼすことになるでしょう。逆に、日常的に栄養に気を配った食事を摂ることで、身体の免疫機能は活性化し、健康な体を手に入れることが出来るのです。
免疫力を高めるために必要な栄養素とは?
免疫力を高めるために必要な栄養素として、ビタミンA、鉄分、アミノ酸、β-グルカン等が挙げられます。ビタミンAには強力な抗酸化作用があります。呼吸などで体内に取り込んだ酸素の一部は、活性酸素というものに変化します。
近年の研究で活性酸素は腸内環境を破壊し免疫力を低下させるということがわかっています。この活性酸素の働きを抑えるためには、抗酸化作用のあるビタミンAを摂取するのが一番です。また、ビタミンAには粘膜を保護してウイルスなどから身体を守る働きもあります。
アミノ酸はスポーツ飲料などに含まれている成分としてよく知られていますが、タンパク質を形成する成分であり、その数は20種類にもおよびます。
その中でも特に免疫機能に関わってくるのが、アルギニンとグルタミンです。アルギニン自体にウイルスなどを攻撃・破壊する働きがありますし、グルタミンには免疫細胞の増殖を促進する働きがあるのです。血液中のアミノ酸の濃度が高くなるにしたがって、免疫細胞の働きが活性化します。
鉄分には好中球やリンパ球などの免疫細胞が本来持っている殺菌作用をより高める力があります。また鉄分には粘膜の状態を健康に保つ働きもあるため、不足するとインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなると言われています。
β-グルカンという栄養素については聞いたことがないという人が多いかもしれません。健康食品やサプリメント、抗がん剤などにも含まれている成分で、免疫力を高める強い働きがあります。
β-グルカンを摂取すると、リンパ球やマクロファージに作用して免疫機能が高まるのです。また、ウイルスに対する防御機能を持つインターフェロンの生成を促す働きもあります。
免疫力を高めるために是非食べたい食材
免疫力を高めるために日頃から意識して食べたほうが良い食材をいくつかご紹介していきましょう。レバー、ほうれん草、鶏肉、キノコ類などを積極的に食べることで免疫力アップが期待できます。
レバーはビタミンAと鉄分がとても豊富でありながら、低カロリー・低脂質という素晴らしい食材です。ただし、ビタミンAは過剰に摂取すると頭痛や吐き気をもよおすことがあるので食べ過ぎには注意が必要です。
また、ほうれん草もビタミンAと鉄分を豊富に含みます。ビタミンAは脂溶性のビタミンですので、効率よく摂取するために油と一緒に食べたり、油で炒めたりすると良いでしょう。
鶏肉は高タンパク低カロリーの代表的な食材で、アミノ酸も豊富に含まれています。また、ビタミンCを含む食材(小松菜、ピーマン、ブロッコリー等)や、ビタミンEを含む食材(カボチャ、ホウレン草、イワシ等)と一緒に摂取することで、アミノ酸本来の力がより発揮されます。一回の食事でまとめて摂取するよりも、一日3回の食事でバランスよく摂ることが大切です。
キノコ類にはβ-グルカンが豊富に含まれています。β-グルカンを摂取するタイミングは空腹時がベストです。β-グルカンは腸の内壁に存在する免疫細胞に作用するため、腸内が空の状態の時に摂取すると効果的なのです。
また、免疫細胞の約70%は腸内に存在すると言われています。そのため、腸内環境を整えて、免疫細胞の働きを活性化させることも免疫力を高めるためには大切なことです。
納豆に含まれる納豆菌やナットウキナーゼ、ヨーグルトに含まれるビヒズス菌や乳酸菌などを毎日摂取すると良いと言われています。
なお、加齢により免疫力は低下していくと言われています。高齢の人は特に日々の食事に気を配る必要があると言えるでしょう。また、免疫細胞は昼間に強く活性し、夜になるとそれが低下します。
つまり、しっかり朝食を食べるということは免疫力を高めるために重要なことなのです。また、インスタント食品などに含まれる添加物は、血液や内臓に負担をかけ、免疫力の低下を引き起こしますので、頻繁に口にするのは避けたほうが良いでしょう。
監修:孫 苓献
広州中医薬大学中医学(漢方医学)博士・アメリカ自然医学会(ANMA)自然医学医師・台湾大学萬華医院統合医療センター顧問医師