入浴と免疫力の関係
がん治療を行うにあたって、免疫力を高めることは大変重要なテーマとなります。増殖を続けるがん細胞を抑えることが出来るのは、NK細胞やリンパ球といった免疫細胞だからです。
注射などの医療行為で免疫力を高めることは可能ですが、がん治療中の患者に負担をかけない方法を選択することが好ましいと言えるでしょう。
そこで、入浴という日常行為を通じて免疫を高める方法が注目されています。なぜ、入浴するだけで免疫力が高まるのか?湯船につかると水圧の影響で血管が収縮します。
そしてお湯からあがると同時に、血液が心臓に送り返され心臓や血管、リンパなどの循環器系の働きが活性化します。リンパの流れが良くなると、免疫機能を司るリンパ球が全身にくまなく行きわたり、免疫力が高まるのです。
また入浴によって身体を芯まで温めることで冷え性などが改善され、それに伴い自律神経のバランスが保たれます。すると免疫機能を正常に保つ働きのある副交感神経が優位な状態になり、免疫力が高まるのです。
お湯につかってリラックスすることも大切です。気持ちがゆったりと落ち着いた状態になることでも副交感神経が優位となります。
免疫力を高めるのに効果的な入浴法 ~半身浴~
半身浴は高い美容効果から女性に人気の高い入浴法ですが、免疫力を高める作用もあります。半身浴は全身浴に比べて長時間お湯につかることが可能ですので、身体が芯まで温まりお風呂から出ても長い間その状態が続きます。
効果的な半身浴の方法ですが、みぞおちの周辺までつかる程度の量のお湯にゆったりと30分程度入ります。温度は39~40度くらいが最適です。
少しぬるいと感じるかもしれませんが、これ以上熱いお湯ですと長時間入浴するのは身体に負担がかかりますし、これ以上ぬるいお湯では身体が温まらず風邪をひいてしまう可能性があります。
半身浴は長時間お湯につかるため、多量の汗をかきます。そのため入浴前にしっかり水分補給をするか、お風呂に水やスポーツドリンクなどを持ち込んでそれを飲みながら入浴すると良いでしょう。
また、長時間お風呂につかることが苦手な人は、好きな音楽を聴いたり、雑誌などを持ち込んだりして、入浴の時間が楽しくなるような工夫をしてみてはいかがでしょうか。
免疫力を高めるのに効果的な入浴法 ~足湯~
免疫力を高めるために、足湯につかるのも効果的です。足湯は全身浴とほぼ同じ効果を得ることが出来ると言われています。足は心臓から遠いため、血液の循環が滞りやすく冷えてしまいがちです。足湯で温めることで冷えを改善し免疫力アップが期待できます。
また、ふくらはぎは第二の心臓と呼ばれていて、血液を循環させるポンプの役割があります。ふくらはぎを温めることで血流が促進し、それとともに免疫細胞が全身くまなく行き渡り、免疫力アップにつながるのです。また、ふくらはぎを温めることで自律神経のバランスを整える効果もあるということがわかっています。
足湯のやり方ですが、バケツやタライなどに41~42度のお湯を張り、ふくらはぎの下あたりまでお湯にひたします。15分程度入っていると身体の芯まで温まり、汗が出る人もいるでしょう。
お湯の温度が下がってきたら、熱いお湯をつぎ足してください。足湯は服を着たままでも気軽にできますので、風邪などで体調が悪く入浴を控えたいときなどに試してみてはいかがでしょうか。
免疫力を高めるのに効果的な入浴法 ~効果的なシャワーの浴び方~
毎日、湯船につかる人と、シャワーだけで済ます人の体温とリンパ球数を比較したところ、シャワーだけの人は体温が低く、リンパ球数も安定していないという研究結果があります。
入浴をシャワーだけで済ませる人も多いかもしれませんが、身体の表面は温まりますが芯までは温まりません。免疫力を高めるためにも、出来る限りゆっくりとお風呂につかることが大切だと言えるでしょう。
ただ、どうしてもゆっくり湯船につかる時間がない場合は、まずぬる目のお湯を浴びるようにしましょう。身体が慣れてきたところで、温かいお湯を浴びるのです。こうすることで自律神経のバランスが整い免疫力がアップします。
入浴に最適な温度とは?
免疫力を高めるためには、自分が心地よいと感じる温度のお湯に浸かることが大切です。一般的に人が心地よいと感じるお湯の温度は、自分の体温プラス4度と言われています。平熱が35度の人であれば、39度のお湯が最適というわけです。
心地よいと感じる温度のお湯につかり身心ともにリラックスすることで、副交感神経の働きが活性化します。
中には熱いお湯が好きだという人もいるでしょうけれど、副交感神経が優位になる温度は40度以下だと言われています。
特に42~43度といった高温のお湯につかると交感神経が活発になり、身体が緊張状態になり血流が滞ってしまうので注意が必要です。熱いお湯が好きでも、週に何回かはぬる目のお湯につかるようにすると良いでしょう。
監修:孫 苓献
広州中医薬大学中医学(漢方医学)博士・アメリカ自然医学会(ANMA)自然医学医師・台湾大学萬華医院統合医療センター顧問医師