
「がんの可能性があると医師に言われた…」
「がんと診断されたけど仕事は辞めた方がいい?」
「治療にかかるお金はどのくらいなの…?」
一生涯のうちがんになる確率は2人に1人。しかし、自分や家族が実際にがんと診断されると大きな不安とショックに押しつぶされそうになります。がんと診断された人の多くは「なんで私が?」「何かの間違いでは?」と混乱しますが、これらは自然な反応です。そのような状況下では、適切な判断ができない可能性があるでしょう。
この記事では、がんの疑いがあるまたはがんと診断されてから、治療にいたるまでにやるべきことについて解説しています。がんと診断されてから治療に至るまでには、さまざまなことを決めたり、手続きをしたりなどやるべきことがたくさんありますので、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
1.がんの疑いがあると言われた
がんの疑いがあると診断された場合、がんの識別をおこなうために検査や手術が必要となります。ここでは、がんの疑いがあると言われた際にやるべきことについて具体的に解説します。にやるべきことについて具体的に解説します。
1-1.お金・保険のこと
加入している民間保険の確認と限度額適用認定書申請の手続きをおこないましょう。がんであるかどうかの識別のために、大きな検査や手術を受けなければならないことがあります。その際には、入院が必要となることもあるため、医療費の出費に備えておくことが必要です。限度額適用認定書申請を事前におこなっておくことで、窓口で支払う医療費の負担を減らすことができます。
1-2.仕事・学校のこと
がんの診断のために入院での手術や検査が必要な場合があります。入院が必要となる場合には、仕事や学校を一定期間休まなければならないため、あらかじめ上司などに相談をしておくとスケジュール調整がしやすくなるでしょう。
1-3.私生活のこと
「がんだったらどうしよう…」と漠然とした不安が強い時期。がんかもしれないと不安になったり、悲しくなったりするのは自然な反応です。つらい気持ちは自分で抱え込まずに、周囲に吐き出しても大丈夫です。大切な人や友人に聞いてもらうことで、落ち込んでいる気持ちが楽になることもあります。
2.がんの確定診断後から治療開始まで
がんと確定診断がついたら、がんの部位やステージに合わせた治療が開始となります。ここでは、がんの確定診断後から治療開始までにやるべきことについて具体的に解説します。
2-1.まずは気持ちを落ち着かせるために何もしないことが大切
「何で自分ががんに?」「なにかの間違いでは…?」
がんと確定診断を受けた後は、ショックや不安が最も大きく、ストレスが強くかかる時。無理に頑張ったり、平気なふりをする必要はありません。突然の告知を受け入れることができないのは、当たり前の反応です。自分の気持ちを尊重し、ありのままの自分と向き合っていくことが大切です。不安やショックな気持ちは、時間が経つにつれて和らいでいくことが多いですが、日常生活に支障をきたしたり、つらい気持ちが長く続いたりする場合には心療内科を受診してみるとよいでしょう。
2-2.お金・保険のこと
がんと診断をされたら、がんの部位やステージに合わせた治療が必要となります。治療にはお金が必要です。治療開始前に加入している民間保険の確認と限度額適用認定証の申請をおこなうようにしましょう。
住宅ローンを組んでいて、がん団信に加入している場合、条件を満たせばローンの残債が0になることもあります。
また、年間の医療費(通院・入院含む)が10万円を超える場合には、医療費控除を受けることが可能です。確定申告をおこなうことで、所得税が還付されたり、住民税が安くなったりするため、医療機関の窓口で受け取った領収書は必ず保管するようにしましょう。
2-3.仕事・学校のこと
がんの治療には大きく分けて以下の方法があり、がんの部位やステージに応じて治療法が決定されます。
●手術
●薬物療法(抗がん剤・ホルモン剤・免疫チェックポイント阻害薬など)
●放射線療法
基本的に初回治療は入院しなければならないことが多いため、仕事や学校を一定期間休まなければならないでしょう。通院での治療でも可能と判断されたら、仕事や学校に通いながら治療や経過観察のために通院するといったスタイルをとることも可能です。
2-4.私生活のこと
可能であれば大切な人や職場、友人など周りの人にがんであることを伝え、理解と協力を得るとよいでしょう。AYA世代(思春期〜30代)のがんの場合、仕事や学校、家庭内での役割がある人も多いため、一時的に役割を担ってもらえる存在を探しておくことをおすすめします。
2-5.治療方針の決定
がんの部位やステージによって治療法を決定していく必要があります。多くの場合、がんの三大治療といわれている以下の方法から選択されます。
●手術
●薬物療法(抗がん剤・ホルモン剤・免疫チェックポイント阻害薬など)
●放射線療法
併用しておこなう場合や、薬物療法や放射線療法でがんを小さくしてから手術をおこなうなど治療はさまざまです。基本的には安全性と治療効果のエビデンスが十分にある「標準治療」を選択し治療を進めていきます。標準治療にも複数の選択肢がある場合もあり、その中から治療方針の選択をしなければならないこともあります。
2-6.セカンドオピニオン
セカンドオピニオンとは、患者さんが納得のいく治療法を選択することができるように、治療の進行状況、次の段階の治療選択などについて、現在診療を受けている担当医とは別に、違う医療機関の医師に「第2の意見」を求めることです。
引用:東京都福祉保健局
セカンドオピニオン=転院することではなく、今の主治医のもとで治療を受ける前提のもとで利用するものです。
納得して治療を受けるため、病気や治療の知識を深めるためにも、他の医師の見解を聞くことも選択肢の一つとするのもよいでしょう。セカンドオピニオンを希望する場合には、以下の流れで受けていただく形となります。
1.現在の担当医の説明を聞き、理解する(ファーストオピニオン)
2.セカンドオピニオンを受けることを決める
3.セカンドオピニオンを受ける病院を選択する
4.現在の担当医にセカンドオピニオンを希望する旨を伝え、紹介状をもらう
5.セカンドオピニオンを受ける病院の受診の予約を取る
6.セカンドオピニオンを受ける
7.現在の担当医にセカンドオピニオンの結果を伝える
セカンドオピニオンを受けるためには、現在の担当医からのファーストオピニオンをしっかりと理解しておくことが大切です。ファーストオピニオンを聞いたうえで、何故セカンドオピニオンを受けたいと思ったのかを整理し、セカンドオピニオン時に聞きたいことをまとめておくとよいでしょう。また、ファーストオピニオンやセカンドオピニオンは1人で聞くのではなく、可能であれば家族に同席してもらうようにしてください。
3.がんの治療中
がんの治療は部位やステージによって異なりますが、長期にわたることもあります。ここでは、がんの治療中にやっておくべきことについて解説します。
3-1.お金・保険のこと
がんの治療には思った以上にお金がかかるといわれる人も少なくありあません。加入している民間保険への申告、限度額適用認定証の申請をおこない、手出しでの負担をなるべく減らすことでお金に関する不安が少なくなるでしょう。
がんのステージや治療内容によっては、長期にわたることもあります。治療を受けるにあたり、かかる費用や使える制度を理解しておくことは大切です。
がんの治療にかかる主な費用は以下のとおりです。 画像引用:がん情報サービス|国立研究開発法人国立がん研究センター
治療中のお金が不安な場合には、加入している民間保険や限度額適用認定証の申請以外にも利用できる制度を知っておく必要があります。
健康保険の被保険者が、病気で仕事を休み、給料が支給されなかったり減額された場合に、生活を保障するために給付される「傷病手当金」。病気やけがによる障害で、日常生活や働くことに支障が出た場合に支給される「障害年金」が利用できる場合もあります。
3-2.仕事・学校のこと
入院または通院で治療をおこなっていきます。入院の場合には、仕事や学校を休む必要があるため、あらかじめスケジュールを調整しておく必要があります。通院での治療が可能な場合は、仕事や学校に行きながら治療を受けることになるでしょう。ただし、治療内容によっては、毎日・毎週の通院となることもあるため、あらかじめ治療スケジュールを把握しておく必要があるため注意が必要です。
仕事や学校に行きながら治療が可能でも、副作用に悩まされる出勤や通学が困難であることは珍しくありません。治療中は抵抗力も落ちているため、無理のない範囲で治療と仕事や学校を両立させることが大切です。
3-3.私生活のこと
治療内容にもよりますが、通院や入退院を繰り返しながら生活を送っていくこととなります。放射線治療や薬物療法(抗がん剤など)の場合、初回の治療は副作用の観察のために入院でおこなうことがほとんどです。
通院での治療の場合には、副作用のモニタリングを自分自身でおこなっていく必要があります。副作用がきつい時期などには、仕事や家事が手につかないこともあるでしょう。そのような時のために、仕事の休みの調整や家事代行サービスの利用などあらかじめ対策を考えておくことをおすすめします。
3-4.社会資源について知っておく
がんの治療中は、お金と生活の面での悩みが大きくなります。そんな時には、がんの時にも利用できる社会資源を活用することがおすすめです。
治療中にお金の面で不安がある際には、「傷病手当金」や「障害年金」を利用できる可能性があります。
●傷病手当金
「傷病手当金」とは、健康保険の被保険者が、病気やけがで仕事を休み、給料が支給されない・減額された場合に、生活を保障するために給付されるものです。ただし、国民健康保険には傷病手当金の制度はありません。
●障害年金
「障害年金」とは、病気やけがによる障害で、日常生活や働くことに支障が出た場合に支給されるものです。「一定の障害の状態にあること」「公的年金制度に加入していること」「保険料の納付要件を満たしていること」が申請の条件となります。
がんの場合に知っておいて欲しいのは、人工肛門や新膀胱の造設など身体の機能が変わった場合だけが障害年金の申請対象となるわけではないということ。抗がん剤などの薬物治療の副作用による倦怠感(だるさ)や末梢神経障害、貧血、下痢、嘔吐、体重減少など、見た目では分かりにくい障害の場合でも、その原因ががんの治療によるものであって現在の仕事に支障をきたすことが認められた場合には、障害年金が支給される可能性があります。
また、生活に支障をきたしている場合には、「介護保険制度」や「介護休業」を利用できる可能性があります。
●介護保険制度
「介護保険制度」とは、病気や加齢に伴う体力の低下により、要介護状態になった場合や、家事や身支度等の日常生活に支援が必要である要支援状態になった場合に、介護サービスを受けることができる制度です。
●介護休業
「介護休業」は、要介護状態にある対象家族を介護するため取得できる休業です。対象家族1人につき3回の介護休業を取得することが可能です。ただし、雇用保険に加入していない場合には介護休業は取得できません。介護休業中は、介護休業給付金が支給されるため、収入面で大きな心配をする必要はありません。
3-5.治療内容が変更になることもある
がんの治療は途中で治療内容が変更になることも珍しくありません。特にがん薬物療法(抗がん剤など)の場合は、治療の途中で効果がなくなってしまうこともあります。そのような場合には、使う薬剤を変更して治療をおこなっていきます。
治療内容が変更になったタイミングでセカンドオピニオンを受けたり、治験への参加を考えてみるのも選択肢の1つとして考えてもよいでしょう。いずれにせよ、担当医に自分の意思をしっかりと伝える必要があります。また、治験への参加を希望していても条件を満たすことができなければ治験を受けることが難しい場合があることも頭に入れておいてください。
3-6.緩和ケアは治療と併用して受けることが最近の主流
一昔前までは、緩和ケア=終末期医療と認識されていたため、今でもこのイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか。現代における緩和ケアとは、がんと診断されたときから始まり、治療の土台となっています。
がんになると、がん自体の症状のほかにも、疼痛や呼吸苦、不安や悲しみなどの身体的・精神的な症状が現れることが多くあります。緩和ケアではこのような身体的・精神的苦痛を和らげていきます。治療を円滑におこなうため・生活のQOLを維持するために、緩和ケアは重要な役割を担っているのです。
4.まずは自分自身のがんについて知ることが大切
がんと診断されたら、まずは自分自身のがんについて知ることが大切です。
自分自身のがんについて知るには、担当医の説明をしっかりと聞く必要があります。しかし、がんと診断されて間もないと不安や悲しい気持ちが強くなり、担当医の説明もしっかりと聞くことができないことが多いのが現状です。可能であれば、家族や親しい人と一緒に話を聞くことをおすすめします。また、説明を受ける際にはどのような説明を受けたのか簡単にメモを取っておくとよいでしょう。
あなた自身が自分自身のがんのことをしっかりと理解し、治療に臨むことが非常に大切です。
5.ステージⅣは末期がんではない
ステージⅣのがん=末期がんと連想する人は多いのではないでしょうか。がんのステージは、あくまでもがんの進行度合を示すものであり、最期が近いことを意味するものではありません。ステージⅣのがんであっても、がんの治療をおこないながら5年や10年と生きる人もいます。
ただし、ステージⅣのがんは完治を目指すことが非常に難しいです。がんと上手く向き合って生きていくことが大切になります。
6.まとめ:情報はあくまでも統計でありすべて当てはまるわけではない
ネットで簡単に検索できる現代。がんと診断されて不安でさまざまな情報を検索している人は多いでしょう。さまざまなネット上の情報を目にして不安になっている方もいるはずです。
がんの経過は人それぞれであり、10人いれば10通りの経過があります。ネット上に記載されている情報はあくまでも統計であり、すべてがあなたに当てはまるわけではありません。大切なのは信頼できる担当医のもとで、納得して治療に臨むことです。がんと上手く向き合いながら、大切なあなた自身の人生を歩んでいってください。