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末期がんとは?診断後にやるべき3つのことについても紹介

「ステージⅣと診断された私は末期がんなの…?」
「末期がんと診断された人の残された時間はどのくらい?」
「末期がんと診断されたあとにやるべきことはある?」
生涯のうち約2人に1人ががんと診断されるといわれています。しかしながら、実際にがんと診断されたときのショックや不安は大きいものです。この記事を読んでいる人の中にも、自分や家族、身近な人が「末期がん」「ステージⅣの進行がん」と診断され不安に思われている人もいるのではないでしょうか。
結論をいうと、末期がんとは、治療法がもう残されていない終末期を迎えた状態のがんのことを指します。そのため、ステージⅣのがんが必ずしも末期がんであるとは限りません。
この記事では、末期がんについて詳しく解説していきます。末期がんと診断されたあとにやるべきことなどについても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

1. 末期がんとは

末期がんとは、がん自体の治療の選択肢がなくなり終末期を迎えた状態のことです。終末期とは、病気や老衰、障害などの進行によって、治療効果が期待できなくなり、余命が数ヶ月以内と診断されたあとの時期のことを指します。
あくまでも、残された時間がそう長くはないという意味の「末期」であって、病気のステージが進行した状態の「末期」ではありません。
がんにおけるステージは、病気の進行度を表すものです。そのため、進行度が最も進んだ状態であるステージⅣのがんと診断されたからといって、すべての患者が末期がんであるとは限らないのです。
実際にステージⅣのがんと診断されても、5年10年と生きている人はいます。確かに、ステージⅣのがんと診断された場合、治療で根治を目指すことは非常に難しいです。しかし、治療を受けながらがんと上手く向き合っていくことで、普段どおりの生活を長く続けていくことは、すべての症例では当てはまるわけではありませんが可能です。
医師をはじめとした医療スタッフもがんとうまく向き合いながら、あなたらしい人生が歩めるように支援していきます。

2. 緩和ケアは末期がんの人だけが対象ではない

緩和ケアとは、がんに伴う心と体のつらさを和らげていくことです。
医師から「緩和ケア」という言葉を聞くと「残された時間がもう短いのでは?」と不安に思われる人もいるでしょう。このように思われる人がいるのは、緩和ケアの定義が「治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する」​​ものとされていたことが影響していると考えられます。この定義は1990年にWHOが発表したものであり、2002年に新たに修正された現在の緩和ケアの定義は「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対する」ケアとなりました。
現代における緩和ケアは、がんと診断されたときからスタートし、治療の土台となります。

画像引用:厚生労働省サイト

緩和ケアは、がんによる身体的苦痛だけでなく、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛の緩和を目的としています。このような苦痛は、がんそのものの治療にも影響を及ぼすことがあるため、早い段階でケアをしていくことが非常に大切となるのです。

3. がんのステージとは

ここでは、がんの進行度を表すステージについて詳しく解説します。
ステージとは、「病期」「病気分類」とも呼ばれ、がんの大きさや他の臓器への広がり方でがんを分類し、進行の程度を判定するための基準です。がんの治療法を選ぶために判定したり、生存率を出すときの区分として用いたりします。

日本ではUICC TNM分類がん取扱い規約が用いられることが多いです。ここでは、UICC TNM分類のステージについて紹介していきます。

ステージ0

ステージ0のがんの特徴は以下のとおりです。

●がんが上皮内の細胞にとどまっているもの
●所属リンパ節と遠隔(他臓器)への転移はなし

ステージⅠ

ステージⅠのがんの特徴は以下のとおりです。

●がんが筋肉層までにとどまるもの
●所属リンパ節と遠隔(他臓器)への転移はなし

ステージⅡ

ステージⅡのがんの特徴は以下のとおりです。

●がんが筋肉層を超えて浸潤している
●所属リンパ節と遠隔(他臓器)への転移はなし

ステージⅢ

ステージⅢのがんの特徴は以下のとおりです。

●がんの深さにかかわらずリンパ節に転移しているもの

ステージⅣ

ステージⅣのがんの特徴は以下のとおりです。

●がんの深さやリンパ節への転移にかかわらず、遠隔(他臓器)に転移している

4. がんの三大治療法

がんの治療には大きく分けて以下の3つがあります。

●手術療法
●放射線療法
●がん薬物療法

それぞれ詳しく解説していきます。

手術療法

がんを外科的処置により、局所的に切除する方法です。がんの確定診断のためにも手術がおこなわれることもあります。手術では、がん組織だけでなく、周囲の組織や転移しやすいリンパ節を同時に取り除き、がんの広がりを予防していきます。
一方で切除する組織の大きさや部位によっては、臓器や体の機能が失われることもあり、手術後の生活へ影響を及ぼすこともあるでしょう。
また、手術療法が適応となるためには手術に持ち堪えられる体力があることが条件となります。高齢であったり基礎疾患があったりなどで、全身麻酔や手術に耐えられないと判断された場合には、手術の適応とはなりません。

現代における手術療法は、胸腔鏡下や内視鏡手術など体への負担が小さくなっているのも特徴の1つです。また、術前に化学療法をおこない、腫瘍を小さくしてから手術をするといった方法や術後の再発のリスクを減らすために術後化学療法を併用することもあります。
手術療法が選択されるのは、一般的にステージⅠ〜Ⅱのがんと診断された場合のみです。リンパ節や他臓器に転移があるとわかった時点で手術がおこなえなくなります。

放射線療法

放射線療法とは、患部に放射線を照射することでがん細胞を死滅させたり増殖を抑えたりする治療法です。がん細胞は、正常細胞と比べて放射線の影響を受けやすいといった特徴があります。この性質を利用し、がんのある部位に高エネルギーの放射線を照射することで、がん細胞のDNAに損傷を与え死滅もしくは増殖を抑制することができるのです。
放射線療法は単独でおこなわれることもありますが、手術療法やがん薬物療法と併用しておこなわれることもあります。放射線を当てる強さによって、副作用の症状も強く出やすくなるのが特徴です。
がんを死滅させるだけではなく、がんによる痛みを抑えるためにも、放射線療法がおこなわれることがあります。

がん薬物療法

抗がん剤をはじめとした、ホルモン剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬などのことを薬物療法といいます。がんの治療では、薬物療法のみを続けていくこともありますが、手術療法や放射線療法と併用しておこなっていくこともあります。
がん薬物療法を受ける場合には、必ずしも入院しなければならないわけではありません。治療内容によっては、外来通院でも可能な場合もあります。治療スケジュールや外来での治療ができるかどうかについては、主治医に確認してみるとよいでしょう。
治療開始後は、定期的に検査をおこない治療の効果判定をおこないながら治療を継続したり、治療内容を変更したりしていきます。

5. 治療をしながら仕事を続けることも可能

末期がんにかかわらず、がんと診断されたあとに仕事を辞めてしまう人は少なくありません。治療の内容によっては、仕事を続けながらでもがんの治療を進めていくことが可能です。今後の治療スケジュールと仕事を続けることが可能であるかの見通しを主治医に相談しましょう。
また、治療と仕事を継続していくためには、職場の理解も必要になります。主治医、職場に相談しながら決めていくことが大切です。職場によっては、福利厚生や公的制度を利用できることもあるため事前に確認しておくことをおすすめします。

6. 末期がんと診断されたら考えたいこと

末期がんと医師に診断されると、ショックや不安が大きく、何も考えられなくなってしまう人もいるでしょう。こんなときは、無理に頑張ったり平気なふりをしたりする必要はありません。突然の診断を受け入れることができないのは、当たり前の反応です。
自分の気持ちを尊重し、ありのままの自分と向き合っていくことが大切です。不安やショックな気持ちは、時間が経つにつれて和らいでいくことが多いです。
辛い時期ではありますが、自分の気持ちと向き合いながら以下の3つのことを考えておくことをおすすめします。

●アドバンスケアプランニング(人生会議)
●終活
●がんゲノムプロファイリング検査(がん遺伝子パネル検査)

それぞれ詳しくみていきましょう。

アドバンスケアプランニング(人生会議)

アドバンスケアプランニング(ACP)という言葉を聞いたことはないでしょうか。人生会議とも呼ばれるACPとは、将来の変化に備えて、将来の医療およびケアについて、家族や近しい人、医療スタッフと繰り返し話し合いをおこなうことで、どういう人生を送りたいか、どういう最期を迎えたいのか意思決定していくプロセスのことです。
あなた自身は、どのような最期を迎えたいかじっくりと考えたことはあるでしょうか。最期は家で家族に囲まれながら過ごしたい、医療スタッフのいる病院で安心して過ごしたいなど個々の想いはさまざまでしょう。
いよいよの状態となると意思疎通が上手くとれなくなってしまうことも珍しくありません。こうしたいという想いはあるのに上手く伝えられなければ、家族や医療スタッフはあなたの希望どおりに動くことができません。
あらかじめ、最期を迎えるにあたっての自分自身の人生プランをACP(人生会議)として周りに伝えておくことが大切になります。

終活

「終活」とは、人生の終わりを見越してさまざまな準備を進めることです。具体的な内容は以下のとおりです。

●身の回りの整理
●財産整理
●保険のこと
●葬儀の準備
●お墓の準備
●最期の迎え方について考える

一部アドバンスケアプランニングの内容とも重複する部分がありますが、これらのことをあらかじめ準備しておくことで、残された家族の負担軽減にもつながります。
終活は余命の診断がされた人だけではなく、健康な人にとっても重要なことです。終活と聞くと縁起が悪いと思う人も少なくないでしょう。しかし、末期がんと診断されて「死んだらどうなるんだろう」と漠然とした不安を抱えながら日々を送っている人もいるはずです。
これらの漠然とした不安は、終活を進めていくことで、解消できたという人も多くいます。
終活は、自分自身の人生を見つめ直すきっかけともなるため、死への不安が軽減するといった効果もあるのです。

がんゲノムプロファイリング検査(がん遺伝子パネル検査)

「治療法がない」「標準治療はすべて終わった」と言われた場合、がんゲノムプロファイリング検査(がん遺伝子パネル検査)の対象となる可能性があります。
がんゲノムプロファイリング検査とは、がんの組織を用いてがんの遺伝子情報について詳しく検査する方法です。新たな治療法を見つけ出すために有効な検査の1つになります。ただし、がんゲノムプロファイリング検査を受けたからといって必ずしも治療法が見つかるわけではありません。新たな治療法が見つかる可能性は約1〜2割程度ともいわれています。
また、検査の内容によっては保険診療の対象外となることも。その場合、自己負担額が大きくなる可能性もあるため注意が必要です。
がんゲノムプロファイリング検査について詳しく知りたい場合には、主治医に相談してみるとよいでしょう。

7. まとめ:末期がんでもあなたらしい人生を忘れずに

この記事では、末期がんについて詳しく紹介しました。末期がんと診断されると、がんになった自分を責めたり死への漠然の不安が押し寄せたりすることがあるでしょう。
ショックや不安な気持ちが強く、日常生活に支障をきたしてしまうこともあります。この気持ちは正常な反応であって無理に抑え込もうとする必要はありません。家族や友人など身近な人に自分の想いを話すことで、少しずつ気持ちの整理をしていくことができます。
末期がんと診断されると、がんであるという事実にとらわれて、大切な自分自身の人生を見失ってしまうこともあります。
末期がんであっても、一つ一つさまざまなことと向き合いながら、あなたらしい人生を忘れずに過ごしていってください。
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