
「がんが再発する確率ってどのくらい?」
「再発はどのくらいの期間で発生するの…?」
生涯のうち約2人に1人ががんと診断され、日本人の死因の第1位となっています。そんながんですが、診断されるのは一生涯のうち1回だけとは限りません。まったく別の場所に新しくがんができたり、一度治療した部位に再びがんが発生したりと、複数回がんの診断を受ける方もいます。
特に再発の場合、最初にがんと診断されたときよりも大きなショックを受ける方も少なくありません。
この記事では、がんの1年以内の再発率について詳しく紹介します。がんの再発率は発生した部位やタイプによって異なるのが特徴で、再発率を厳密に計算することは難しいケースもあります。ただ、多くのがんは1〜2年以内に再発しています。部位別の再発率についても詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.がんの1年以内の再発率を部位別に紹介

ここでは、以下のがんの1年以内の再発率を紹介します。
- 肺がん
- 大腸がん
- 乳がん
- 胃がん
- 子宮がん
- 前立腺がん
- 肝臓がん
- 胃がん
それぞれ詳しく解説します。
肺がん
肺がんはがんの中でも再発しやすいのが特徴で、Ⅰ期(ステージⅠ)の非小細胞肺がんであっても、再発率が約20〜30%といわれています。再発のほとんどは治療後2年以内に発生し、5年を過ぎるとかなり少なくなります。
肺がんの再発では、がんが他の臓器にも転移していることが多いのが特徴です。そのため、再発の診断となった場合、小細胞肺がん、非小細胞肺がんともに薬物療法を中心とした治療をおこなっていくこととなります。
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大腸がん
大腸がんの再発は、手術から数カ月で再発することもあれば、数年経過後に再発することもあります。その多くは、5年以内に起こります。 そのため、手術の後5年間は、定期的に検査を受ける必要があります。また、再発する人の割合は、がんの進行度(ステージ)によって異なるのが特徴です。

画像引用:大腸がん情報サイト
がんの進行度(ステージ)が高いほど、再発率も高くなっていきます。大腸がんが再発した患者さんのうち、約80%の方が手術から3年以内に、95%以上の方が5年以内に再発が発見されています。
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乳がん
乳がんはほかのがんに比べて進行が遅い傾向にあります。ほかの部位のがんでは5年を過ぎて再発がみられないと「完治」とされることが多いですが、乳がんでは10年以上経過後であっても再発することがあるため注意が必要です。
また、再発しやすい時期は乳がんのタイプによって異なるのが特徴です。トリプルネガティブタイプやHER2陽性の乳がんは、最初の2年間に再発が多く、ホルモン感受性が陽性の乳がんでは、がんの増殖の勢いがゆっくりであることも影響し、5年経過したあとでも再発が多くみられます。
手術や再発予防の薬物療法をおこなった方の再発率は、がんと診断されたとき、あるいは治療時の病期(ステージ)によっても異なりますが、5年以内で30%程度、10年以内で40%程度です。病期ごとにみると、手術後5年以内の再発率は以下のとおりです。

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胃がん
胃がんでは、手術でがんを完全に取りきれた場合であっても、ステージⅡ〜Ⅲの約半数の方が術後に再発するといわれています。
術後の抗がん剤治療などの薬物療法にて、ごく小さな転移を攻撃することで再発率を下げることができます。
ステージⅡ〜Ⅲと診断された方は、術後半年〜1年の間に抗がん剤治療をおこなうことを勧められることが多いです。抗がん剤治療の薬の組み合わせにはさまざまですが、病期(ステージ)や年齢・基礎疾患などで総合的に判断し治療内容が決まります。
国立病院機構仙台医療センターの手島伸氏らが解析した結果によると、1年以内の再発は34.6%、3年以内の再発は72.9%、5年以内の再発は87.0%でした。
胃がんの再発のしやすさは、がんの病期によって異なるのが特徴です。早期胃がんの再発率が約5%以下であるのに対して、進行胃がんの再発率は20%にも及びます。また、再発の多くは3年以内におこっているため、その間は短い間隔で経過を観察していきます。


画像引用:病気と向き合うサイトなら
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子宮がん
手術前にステージⅠ期と推定された場合の手術後の再発率についての研究では、子宮がんの再発率は以下のような結果が出ているものがあります。

しかしながら、基本的には術式による生存率や再発率に差はないといわれています。
ステージⅡの子宮体がんの方を対象に、再発率について調査した研究では、手術を受けた方の23.6%が、術後5年間のうちに再発したといわれています。
また、ステージⅡ期でがんが筋層の2分の1以上の深さまで達していて、がんそのものが大きい場合、単純子宮全摘出術よりも準広汎子宮全摘出術のほうが予後がよいという報告もあるといわれています。
それぞれ子宮がんで想定されるケースの、生存率・再発率の研究結果は以下のとおりです。

卵巣を温存した場合と閉経前のステージI・II期の類内膜がんで子宮、卵巣・卵管を切除した場合での再発率は以下のとおりです。

子宮体がんの治療の基本は、子宮と卵巣・卵管の摘出です。そのため、卵巣を温存する場合は、類内膜腺がん(高分化型)で筋層浸潤の浅いもの、かつ若年で将来強く出産を望んでいる場合にのみ考慮されることとなっています。
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前立腺がん
根治を目的にして前立腺を摘出した場合でも、術後5年以内に約25〜35%の方が再発してしまうといわれています。厚生労働省研究班が初めて実施した全国調査では、早期前立腺がんで摘出手術を受けた患者のうち、ほぼ2割が後にがんを再発していた事が分かりました。
しかし、この再発とは、術後低下したPSA値(0.1ng/mL未満)が再上昇を始めた(0.2ng/mL以上)というもので、画像などの診断では再発の場所が特定されない「PSA再発」です。これが進行することで、がんがCT検査や骨シンチグラフィーなどで見えるようになり「臨床的再発」となります。
PSA値とは、前立腺がんを早期発見するために最も有効な検査です。がんや炎症によって前立腺の組織が壊れると、PSAが血液中に漏れ出して増加します。このPSA値を血液検査で調べることで、前立腺がんや再発の可能性を調べます。

PSAの基準値は一般的には0〜4ng/mLです。ただし、年齢によって基準値を下げるケースもあります。PSA値が4〜10ng/mLである場合は「グレーゾーン」といい、25〜40%の割合でがんが発見されます。
これらの数値はあくまでも1つの指標であり、PSA値が10ng/mL以上の場合でも前立腺がんが発見されないこともあったり、4ng/mL以下でも前立腺がんが発見されたりすることもあります。PSA値が100ng/mLを超える場合には、前立腺がんと転移が強く疑われます。
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肝臓がん(肝細胞がん)
肝臓がん(肝細胞がん)は再発する可能性が高いがんです。切除術でがんを取り切れた場合であっても、切除術後2年以内に約70%、5年以内に約80%の方が再発するといわれています。
その理由は、肝臓がんの原因が肝炎ウイルスの感染などによる慢性肝疾患の影響を受けているためです。がんを完全に切除したとしても肝疾患による障害が改善できなければ、残った肝臓から新しいがんが発生します。
このため、肝臓がんの再発予防には肝炎ウイルスの排除と慢性肝炎の治療が非常に重要です。初回治療でがんが排除されたあとであっても、肝炎ウイルスを体内に保有している人の場合では、肝臓の再生が進みにくいうえに、再びがんが発生する可能性が高くなっています。また、肝炎ウイルスを保有していない方でも肥満やアルコール摂取などによる脂肪肝が原因で慢性肝炎が進んでいる状態では、新たにがんが発生するリスクが高くなっています。
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2.がんの再発とは?

「再発」とは、以下の場合を指します。
- 手術で取りきれなかった、目に見えない小さいがんが残っていて再び現れること
- 薬物療法や放射線治療などでいったん縮小したがんが再び大きくなったり、別の場所に同じがんが出現したりすること
- 治療した部位の近くで再発、別の場所で「転移」としてがんが見つかること
前立腺がん、血液やリンパのがんなどの場合には、「再発」でなく「再燃」というように表現されます。
最初の治療(手術)でがんが完全に取り除かれていれば、再発することはありません。しかしながら実際には、がんが発見されたときには多くの場合、すでに目に見える転移または、目に見えない転移があるといわれています。そのため初回の治療では、再発や転移を防ぐ目的で抗がん剤が使われることが多くあります。再発というのは、決して珍しいことではないのです。
転移との違いは?
「転移」とは、がん細胞が最初にできた部位から、血管やリンパ管に入り込み、その流れに乗って別の臓器や器官へ移動してそこで増えることをいいます。
転移には以下のようなものがあります。
- 「リンパ行性転移」リンパ液の流れが集まっているリンパ節への転移
- 「血行性転移」肺や肝臓、脳、骨など血液がたくさん流れている場所への転移
- 「播種」がんが発生した臓器からがん細胞がはがれ落ちて胸腔や腹腔に散らばるように広がること
転移は、脳、肺、骨、肝臓など体のさまざまな部位に起こります。転移した部位によって、肺転移、肝転移、脳転移、骨転移、腹膜転移(腹膜播種)などと呼ばれます。
最初にできたがんの部位は「原発巣」です。たとえば、肺に初めてがんが発生して、肝臓に転移した場合は肝臓がんではなく、「肺がんの肝転移」となります。この場合、「転移」した部分のがんは、「原発巣」のがんと同じ特性を持つことになります。そのため、肺がんが「原発」のがんであれば、肝臓に転移したがんも、肺がんに効果がある抗がん剤でないと反応しません。
「原発」がどこであるのか、そのがんが「転移」か「原発」か、「再発した部位」はどこであるのかなどの情報は、がん治療の方針を決める重要な材料となります。
再発の種類
がんが再発した場合、「局所再発」「領域再発」「遠隔(全身)再発」の3つに分かれます。それぞれの再発の種類によって治療法も異なります。
以下は、大腸がんの転移・再発の例です。

画像引用:国立研究開発法人国立がん研究センター
■局所再発
最初に発生したがんと同じ場所あるいはごく近くに現れるがんのことを指します。
■領域再発
腫瘍が最初に発生したがんの近くのリンパ節または組織で、発達したときに現れることを指します。
■遠隔(全身)再発
最初にがんが発生した場所から、離れている場所の器官または組織に転移していることを指します。
まとめ.再発の早期発見には定期的な通院・検査が大切

この記事では、がんの1年以内の再発率について解説しました。がんは手術後1〜2年以内に再発することが多いのが特徴です。しかし、がんの部位やタイプによっては、5〜10年経過後に再発することも珍しくありません。
いずれにせよ、再発の早期発見には定期的な通院と検査が大切になります。通院や検査を怠っていると、病期がかなり進んだ状態で発見されることとなる可能性があります。
毎年の健康診断や医師からいわれている通院の期間は必ず守るようにしましょう。
●参考文献
・大腸がんの再発,認定NPO法人キャンサーネットジャパン
https://www.cancernet.jp/cancer/colon/colon-recurrence
・大腸がんはどのように再発する?,大腸がん情報サイト
https://www.daichougan.info/metastasis/how.html
・再発・転移乳がんの治療 – 治療法と治療の流れを知る,がんプラス
https://cancer.qlife.jp/breast/breast_feature/article102.html
・野村擁夫先生の”乳がんを知ろう”
http://oikawahp.or.jp/news/pdf/pdf00000083.pdf
・胃癌術後再発時期は中央値1年を超えるが、1年以内の再発が4割という報告も,日経メディカル
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jgca2008/200804/505986_2.html#:~:text=1%E5%B9%B4%E4%BB%A5%E5%86%85%E3%81%AE%E5%86%8D%E7%99%BA%E3%81%AF34.6%EF%BC%85%E3%80%813%E5%B9%B4,%E3%81%AF87.0%EF%BC%85%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82/
・”子宮体がんの再発率と、再発を考慮した治療とは?”
https://medicalnote.jp/contents/200812-002-FG#:~:text=%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B8II%E3%81%AE%E5%AD%90%E5%AE%AE%E4%BD%93,%E3%81%A8%E5%A0%B1%E5%91%8A%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
・前立腺がんへのよくある質問,What's前立腺がん
https://www.zenritsusen.jp/faq/14.html#:~:text=%E6%89%8B%E8%A1%93%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%86%8D%E7%99%BA%E7%8E%87,%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%8CPSA%E5%86%8D%E7%99%BA%E3%80%8D%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
・肝臓がんの再発に備え、肝機能改善のための肝炎ウイルス治療や生活改善が重要,がんプラス
https://cancer.qlife.jp/liver/liver_feature/article2515.html
・がんが再発していますと言われたら,がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/support/saihatsu/index.html