special がん情報誌の特集記事
対談:
王振国 天仙液研究開発者・振国中西医結合腫瘍病院院長
今中健二 中医師・中国医学Labo 同仁広大院長
「第11回国際健康健美長寿フォーラム・博覧会兼第2回世界大健康運動会」が10月27日から30日まで開催され、日本大会の副主席として来日されたのが王振国先生です。王先生は北京、上海、珠海(広東省)、通化(吉林省)にあるがん専門総合病院の振国中西医結合腫瘍病院院長を務め、各地の医療施設で政府要人はもとより、世界各国のがん患者の治療にあたる中西医結合医療の第一人者です。また、中国政府から認可されている抗がん漢方薬「天仙液」の研究開発者でもあります。今回は、会場の神戸国際展示場で、中医師・中国医学Labo 同仁広大院長の今中健二先生と「漢方によるがん治療」をテーマに対談していただきました。
王振国 天仙液研究開発者・振国中西医結合腫瘍病院院長
1954 年、中国吉林省に生まれる。 1975 年、吉林省通化衛生学校(医学校)卒業。1983 年、複合漢方薬 「 天仙液」を研究開発し、1988 年中国政府より医薬品の「がん治療薬剤」(抗がん漢方薬)として認可を受ける。世界個人研究最高発明賞、アメリカ抗癌薬大賞などを受賞
今中健二 中医師・中国医学Labo 同仁広大院長
中国贛南医学院中医科を卒業、中医師となる。神戸市中央区で中国医学Labo 同仁広大を開業。医師や、医学生に中国医学の指導教育を行っている
漢方は西洋医療と併用することで副作用を緩和する
今中:まずは、中国のがん治療の現状についてお話を聞きたいと思います。日本では3大療法として手術・抗がん剤・放射線とありますが、中国ではどうでしょう?
王:基本的に私の場合は、西洋医学と漢方医学のどちらかに偏りすぎるというのではなく、お互いのよさを取り入れ、統合して治療をするという中西医結合医療を行っています。漢方によるがん治療は初期、中期には手術、抗がん剤、放射線治療といった西洋医療と併用して用いることで、抗がん剤や放射線治療の副作用の緩和には大いに役立つと思います。また、末期がんの患者さんに対しては、西洋医療のみの治療効果はあまり感じません。そこで痛みの緩和に関しては、漢方はとても効果があるのではないかと思います。
今中:では、漢方の優れた特徴を教えてください。
王:漢方は、術後の体力回復を助けるには非常によい手段だと思います。患者さんの症状によっても異なると思いますが、私の場合は7割はがん細胞を殺すため、3割は免疫を高めるために用います。患者さんの精(生命の源)を養い、がん細胞を縮小して消えていくように導く方法です。
今中:やはり脾臓と胃が中心ですか?
王:その部分だけではなく、それぞれの患者さんの部位に注目します。胃、腸、腎臓や膀胱などは漢方でいうと「下焦」の部分ですが、そこを冷やさないようにします。冷えは足から入ってきます。冷えていると抗がん剤を使っても効果がありません。まずは身体を温めることが大切です。足湯やカイロで温めたりします。また豚の血を使ったり、大根のスープなどを飲んだりしてお腹を温め、抗がん剤を使えば効果が高まります。
手術をできない人は漢方治療を実践
今中:先生の治療方法を教えてください。
王:私は中国で医者として50年になります。主にがんの予防と治療に専念していますが、今後は伝統的ながん治療を変えていこうと思います。つまり、新しいがんの治療を打ち出していこうと考えています。
今中:それはどのようなものですか?
王:新しいがん治療には8つの方法を考えています。まず、1つ目はコミュニケーションをとり、話すこと。つまり、心理療法です。人は自分の不安や心境を聞いてもらうだけでも心が癒され救われるものです。そこで、誰かに話して共感してもらえたら安心するでしょう。また同じような境遇の方が元気になった事例を目のあたりにすれば、希望を持つことができるでしょう。たとえば胃がんの方ならば同じ胃がんの患者さんで、もう20年間も延命して、普通に社会生活を営んでいる方などを紹介するのです。するとその方の体験談を聞くことにより、自分も同じように健康的に生きられるのではないかと考え、生きる力がわいてきます。
今中:患者さん同士が話し合えるような場をつくるということですね。
王:そうです。まずは病気の治療の前に、心の治療を行うことが大切だと考えています。患者さんが、がん治療や生活に対する恐怖や不安の気持ちを抱いたままで治療をするのではなく、平常心で冷静にポジティブな気持ちで治療を受けられる場をつくれるような配慮をしたいと思っています。
今中:まずは心の問題を解決することですね。
王:2つ目は、中西医結合医療を充実させることです。手術できる人は手術をして再発予防をしますが、手術できない人は漢方で治療します。特に、術後の漢方による再発予防は大切です。今までの症例を見ても、漢方の治療法を続けている患者さんは5年、10年、もしくは20年以上生きられる方がいます。
今中:心の治療の後に漢方の治療が出てくるわけですね。
王:3つ目は、リレー療法です。治療をストップしないで継続していくことです。リンパ節の転移がないかを診てもらうなどして、継続的な診察により、再発を予防することができます。つまり患者さんの治療を手術が終わったからといってほったらかしにするのではなく、ずっと見守り続けていくことです。患者さんのその後の様子をケアするという意味で、リレー療法が大切となります。
食事療法、音楽療法、気功の勧め
王:4つ目は、食事療法です。特に食物繊維の豊富な食材やシイタケなどの菌糸体を摂取することなどを推奨しています。また豆類なども栄養のバランスがよいので摂取することをアドバイスしています。このような食事は、免疫力を高めるだけではなく、漢方でいう養血のためにも役に立ちます。そのほか禁煙はもちろん、禁酒も心がけていただきます。睡眠も大切です。夜更かしも避けるようにするといった生活習慣の改善を提唱します。
5つ目は、音楽療法です。毎日できれば2時間くらいは音楽を聴く習慣をつくり、気の流れをよくして気持ちを穏やかにリラックスしていただくと、体内にたまっている瘀血も流れていきます。もちろん病気の治療にも役立ちます。音楽療法は動物にも効果があります。1万羽の鶏を飼っている養鶏場で常に鶏に音楽を聞かせていると、1日2万個の卵を収穫できますが、実験のために音楽を聞かせないと、卵は1日に半分の1万個になったということです。それだけ音楽の影響は大きいのです。
また心のよりどころも必要です。宗教はもとより信念とか勇気、明るい気持ちを得られる考え方などが必要です。
6つ目は、有酸素運動です。1日5000歩くらいは歩いたり、太極拳や気功をすることをお勧めします。また場(心安まる居心地のよい場所)のよいところに行って、気を整えるのもよいと思います。私たちの病院では毎年、場のよいところに患者さんをご招待して、そこでリラックスをしてもらいます。
7つ目は、がん患者さんに対する生活習慣や考え方の変革を行う教育です。その人の情緒をコントロールする方法の教育も必要だと思います。たとえば、がんになったから「自分は患者だ」と落ち込むのではなく、「たとえがんでも健常者と同じように楽しく過ごせる」といったポジティブな気持ちが大切です。そのような気持ちのコントロール法を指導します。
8つ目は、がん患者さんが自分を「価値ある人間だ」と認められるようなチャンスをつくることです。その価値とは、患者さんに生き甲斐を与えること。つまり、自分に対する価値を与えることです。たとえば歌の得意な方には歌えるステージを与える。話が上手な人ならば、ご自身のがん体験を語ってもらうなど、その人の得意なものを表現して、社会に貢献してもらうことです。がんになったから自分が生きる価値のない人間だと感じてしまうと、生きる希望も失ってしまいます。そこで自分のできることで社会に貢献して、社会から見放されることなく、「自分には価値がある」ということを認めてもらうことですね。
今中:なるほど。8つの方法、素晴らしいですね。治療と同時に、生き方を再確認する好機ともいえますね。
これからは漢方を取り入れた「がん予防医学」が大切になる
王:私は医者ですが、哲学者でもあり、心理学者でもあると思っています。毎年1万人の患者さんを診ていますが、医者と患者さんとの関係ではなく、友人のような関係になっています。今回のセミナーの初日も10数名の患者さんが私に会いにきてくれました。東京には500人から600人の患者さんがいらっしゃいますが、私が来日するとわざわざ会いにきてくれる人が多くいます。今後は、このように医者と患者の関係をより親密なものに変えていく必要があります。また、がんの予防についても力を入れています。
今中:予防医学ですね。
王:神戸では予防医学の研究も盛んということで、今後、ここにがんの拠点をつくっていけたらいいなと思っているところです。
今中:それは楽しみですね。ところで予防医学の診断は医者がするものですか? それとも一般の看護師や保健師がいるのですか?
王:病院の検査が基本となってきますが、あらかじめ漢方を取り入れていくことで、がんにならないよう予防できます。マウスの実験では私が開発した漢方薬を使用することで、がんにならない効果が50% 以上高くなっています。実験ではマウスを水中に入れると、漢方薬を投与しているマウスは、投与してないマウスよりも長く泳ぐことができる結果が出ています。体力がついて、免疫力もアップするからです。
今中:がんだけではなくて、ほかの疾患にも効果があるということですね。
王:私も毎日1本飲んでいます。私は今年で66歳になりました。国内で2日おきに飛行機に乗って移動していますが健康で元気ですよ。
今中:それはすごいですね。それが先生の開発した天仙液の効果なんですね。
抗がん漢方薬の天仙液は研究開発されてから30年の実績
今中:王先生が研究開発された天仙液は、どのようながんに効果がありますか?
王:天仙液は漢方理論、医学・科学理論に基づき長年にわたる研究を重ね、6000種類以上ある漢方生薬の中から、20種類以上の貴重な漢方生薬を厳選し、最新科学技術によって配合、処方して開発されました。中国政府が認可した抗がん漢方薬で、30年の実績があり、世界20カ国以上で用いられています。多くのがん患者さんのために開発しました。どの部位に対しても、がん細胞を殺傷する作用を持っています。特に消化器がんに有効で、著しく効果があるのは食道がんでしょう。大腸がんなどにも効果があります。
今中:副作用などの心配はありますか? また何か気を付けることはありますか?
王:がん患者さんのなかには内臓が弱い方、胃腸の消化吸収ががよくない方もいらっしゃいますが、そのような場合は、ショウガとナツメも一緒に入れて飲むと相性がよいでしょう。また水分を多くとると胃に刺激を与えにくくなりますから、戻したりする症状も抑えられます。使用量についてですが、天仙液は1セット(20㏄×60本)が1カ月分(漢方治療でいう「1療程」)に相当して、抗がん剤治療の「1クール」に当たります。通常、1日に2本(40㏄)が標準使用量ですが、症状の軽い方(初期~中期) の方は1日に1本から2本、症状の重い方(中期~末期)は1日に3本~4本使用されるとよいでしょうね。
今中:がん治療の今後について、どのような展開になっていくと期待されますか?
これからはひとつの方法に偏った治療ではなく、より一層、統合的な治療が必要になると思います。さまざまなよいものを総合的に取り入れていけばがん治療に効果が現れ、多くの患者さんが治癒していくのではないかと思います。そのためには先ほど述べた8つの方法を活用していくことです。すでにこれらを実践している国も増えています。
今中:これからの時代に、がん治療に関して何か課題になっていることはありますか?
王:番の問題は、西洋医学から見る漢方、漢方から見る西洋医学という場面で、お互いに相いれない部分があることです。医者は大きな心を持たないといけません。そして自分の知識に固執することなく、優しい気持ちで、自分の身内のように患者さんを診ていくことです。そうすれば患者さんに苦しい治療を与えることもなく、身内の視点から患者さんの命に向き合うことができるでしょう。
今中:私も中国医学を広める立場として、先生の提唱する8つの方法を多くの人たちに伝えていきたいですね。
今中:ところで日本には「和魂漢才」という言葉があります。日本人の心をもって中国人の知恵と融合することです。
王:日本でも漢方を理解してくださる先生方やマスコミの方も多いので、このような方たちともご一緒にやっていきたいですね。
今中:今日は非常によいお話をありがとうございます。みなさんの笑顔のために先生と一緒にやっていきたいです。
※がん情報誌『統合医療でがんに克つ』対談特集の記事より